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お前の番だ! 370 [お前の番だ! 13 創作]

「今日は花司馬君のこれまでの働きに対する慰労会と云う事にして、折野もあゆみも来間も、夫々濃淡はあるにしろ花司馬君と交流があったのだから、大いに楽しくやれ」
 花司馬筆頭教士の猪口に酒を注ぎ終わった是路総士が云うのでありました。万太郎とあゆみは偶にこのような席に連なる事もありましたが、来間はその日初めて是路総士と鳥枝範士、それに興堂派の筆頭教士と云う重鎮とのくだけた酒宴に同席の栄を賜ったので、逆に緊張で全くくだけない面持ちで花司馬筆頭教士から酌をして貰っているのでありました。
「若しも花司馬先生が何処かで常勝流の道場を開かれるなら、興堂派の現状に不満を持つ門下生達が大挙して押し寄せて来るでしょうね」
 幾つか花司馬筆頭教士と杯の遣り取りをした万太郎が云うのでありました。
「それは屹度そうね。興堂派本部よりも盛況になるんじゃないかしら」
 あゆみが頷くのでありました。
「そりゃあ威治のヤツに習うより、余程本格的な稽古が出来るからな」
 鳥枝範士も頷くのでありました。
「いや、辞めてすぐに自分の道場を、まあ、何処かの体育館を借りて同好会と云う形ででも開いたりするのは、何やら慎みのない所業のようで、今現在は躊躇いがありますね」
「慎みがないとは、誰に対して慎みがないのか?」
 鳥枝範士が猪口をグイと空けてから訊くのでありました。
「まあ、興堂派に対して、と云う事になりましょうか」
 花司馬筆頭教士は徳利を取って空いた鳥枝範士の猪口に酒を注ぐのでありました。
「辞めた以上、何の遠慮が要るものか」
「しかしまあ、地下の道分先生に対しても申しわけが立たないようで。・・・」
「お前の意志や都合で辞めたのではなくて、云ってみれば向こうに無理強いに辞めさせられるようなものなのだから、引け目を感じる必要は何もない」
「でも、形としては自分が辞表を出すのですから、自分の自己都合です」
「形がそうであっても、そう仕向けられたと云う事情は誰でも知っている」
「敢えて事を構えるような真似はしたくないと云う、花司馬君の気持ちでしょうよ」
 是路総士が鳥枝範士の指嗾するような言葉をやんわり制するのでありました。
「そりゃあ態々角を立てるような挑発的な真似は返って損かも知れませんし、得策とは云えないかも知れませんが、彼奴等の思う儘に事を許しておくと、常勝流そのものの品格を世間から疑われて仕舞います。延いては総士先生の名折れともなります」
「まあ、興堂派は我々とは別流派ですからなあ」
「それはそうですが、そうなれば全く無関係だと云う事を世間に知らしめるためにも、常勝流の名前を使わせないようにしなければなりません。奴等と同じ流派だと思われるだけで、胸糞が悪くなるし迷惑ですぞ。こうなれば一番、総本部として強く出ないと」
「まあまあ、そう熱り立たないでください」
 是路総士はそう云いながら鳥枝範士の猪口に酒を差すのでありました。
「ああこれはどうも、恐れ入ります」
(続)
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