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お前の番だ! 357 [お前の番だ! 12 創作]

 直近の鳥枝範士が総本部の中心指導を担当する日に、是路総士は早速稽古後にその気がかりを彼の人に質してみるのでありました。その場には万太郎とあゆみも呼ばれて、四人で夕食を師範控えの間で摂りながらの相談となるのでありました。
「ワシの知りあいの向こうの理事の話しですがね」
 鳥枝範士はそう前置きして話し始めるのでありました。「威治のヤツが会長を後ろ盾にして、興堂派筆頭範士の座に就こうとしているようですな」
「筆頭範士、ですか?」
 その聞き慣れない呼称に是路総士は箸の動きを止めるのでありました。
「そうです。教士、筆頭教士、範士、筆頭範士、という序列を考えているようですな」
「すると道分さんが範士だったから、威治君はそれより上になると云う事になりますか」
 是路総士は少し皮肉めいた口調で云って笑うのでありました。
「道分先生が亡くなったら早速、無神経にもそう云う不謹慎を働こうとしているわけです。要するに花司馬を範士に格上げして、しかし自分はその上の地位になる魂胆です」
「威治君は今、役職として道場長と云う肩書ですかなあ」
「まあ、代が替わって、人心一新、新規蒔き直し、とか云った心算なのでしょうな」
「花司馬先生は筆頭教士から範士になられるのですか?」
 万太郎が訊くのでありました。
「そうだな。格式は一つ上がるが、しかし威治の方は三段跳びで、結局のところは一挙に花司馬の上に立つことになる算段だ。威治は花司馬に、さも恩を施したような気分でいるようだが、何とも虫の良い、手前味噌なご都合主義と云う他ないなこれは」
「それでは若先生よりも長く道分先生に仕えて、興堂派のために尽力してきた花司馬先生の、立つ瀬がないと云うものではありませんか。要するに若先生には矢張り、自分が興堂派のオーナーだと云う意識がおありなのでしょうかね?」
「そうだろうな。常勝流武道興堂派と云う流派は道分家のもの、と云う勘違いだろうな。実はちゃんとした、御上の許可した財団法人と云う公益事業組織なんだけどな」
 それはこの総本部道場に於いても当て嵌まる規定であろうと、万太郎はふと余計な事を考えるのでありました。しかしそんな事を徒に今ここで云い出して、話しをややこしくする気は毛頭ないものだから、それはあっさりと頭の隅に退けるのでありました。
 ただ、興堂派が一子相伝を旨とする、宗家、と云う地位を、是路総士を憚って設けなかったと云う違いがあるだけで、威治教士が自分を実質の宗家と思いなすのも宜なるかなと云うところでもありますか。いやまあ、それはさて置き。・・・
「向こうの会長さんは、どう云うお考えを持っていらっしゃるのでしょうかな?」
 是路総士が話しを進めるのでありました。
「まあ、威治を盛り立ててやって行こうと云う考えのようですな」
 鳥枝範士はそう云って苦った顔をして俯くのでありました。
「理事会の方でもそう云う意見に纏まっているのでしょうかな?」
「それが、そこのところですがねえ、・・・」
(続)
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