So-net無料ブログ作成

お前の番だ! 348 [お前の番だ! 12 創作]

「良さんは今では、鳥枝建設の有能社員になって仕事の方をガンガンやっていますよ」
 万太郎が横から口を出すのでありました。丁度そこに、一旦傍を離れた宇津利が大きな寿司桶を持って、それに他の稽古生にビールを持たせてやって来るのでありました。
「どうぞごゆっくりと召し上がっていてください」
 宇津利は寿司桶をテーブルの真ん中に置くと、手際良く各人の前にグラスを配置してからビール瓶の栓を何本か景気良く抜くのでありました。
「ウチの道場も、これからどうなっていくのかねえ」
 寿司桶を囲む輪の中に目方もその儘居残って、手酌で注いだビールを一口飲んだ後に誰にともなく嘆息して見せるのでありました。
「当然、若先生や花司馬先生が後を引き継いでやっていかれるのでしょう?」
 横に座っている良平が顔を向けながら云うのでありました。
「まあそうだろうが、その花司馬先生と若先生の仲が、あんまり上手くいっていないからなあ。若先生はと云えばあんな風だし、・・・」
 そう云った後に目方は少し顔を顰めて、声を潜めるのでありました。「それを花司馬先生は苦々しく思っているようだが、遠慮があるのかそんなにはっきり諌める事もない」
「花司馬先生と若先生は、昔から仲睦まじいと云った感じではなかったですよねえ」
「花司馬先生の方が歳上だし筆頭教士なんだから、もう少しきっぱりと若先生の色んな良からぬ行状に苦言を呈しても構わないと思うんだが、興堂先生の息子さんに対して、なかなかそう云う事も出来かねると云うのは、まあ、判らないでもないんだけど」
 目方はビールを一気に空けるのでありました。
「若先生は、相変わらず、と云ったところですか?」
 空いた目方のグラスに良平がビールを注ぎ足すのでありました。
「そうだな。段々酷くなってきたとも云える。やる事なす事、決まって周りの人間にあれだけ不興を買う男も、珍しいと云えば全く珍しいね」
「そんなに、ですか?」
「本部の門下生や支部の連中でも、好評価をする者は一人もいないんじゃないか。いや尤も、そんな若先生を取り巻いてお追従を並べたりちやほやしたり、一緒になって感心出来ない真似を大威張りで仕出かすような奴原も、何人か居るには居るがね」
 話されている内容が内容だけに、万太郎は全く無関心ではないけれど話しには努めて加わらないのでありました。それはあゆみも同じでありましょうし、先のゴタゴタがあったから尚更、あゆみとしては云いたい事はあれこれ沢山あるとしても、威治教士の人物評めいた話しには、弁えからも、なるべく加わりたくはないと云うところでありましょうか。
「花司馬先生だけではなく、板場さんも、堂下君とかのごく内輪の人間も、あそこでお客さんに愛想をふり撒いて接待している、準内輪、とも云うべき宇津利なんかも、それに心ある財団の理事さん達も、若先生の事を決して良くは思っていないだろうな」
 目方はビールで口が多少軽くなったのか、未だ威治教士の不評ぶりを云い募るのでありました。目片なりに相当腹に据えかねているところがあるのでありましょう。
(続)
nice!(14)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 14

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0