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お前の番だ! 347 [お前の番だ! 12 創作]

 興堂範士の人望と幅広い交友を物語る光景と云えるでありましょう。勿論、各流各派の武道関係者の顔も多く見られるのでありました。
 第一番目の真榊の奉納者は是路総士でありました。それから主だった会葬者が続き、真榊奉納の行列は引きも切らず続くのでありました。
 万太郎やあゆみ達は一般会葬者と同じに、後方の机の前で単に開手して興堂範士に別れを告げるのでありました。神壇に参った後は内弟子の堂下善郎に案内されて、普段は内弟子や門下生が合宿などする時に使われている隣りあった八畳間二つの、仕切りの襖を取り払った広間へと通されるのでありましたが、是路総士以下主たる会葬者は花司馬筆頭教士に案内されて、師範控えの間の方で料理などがふるまわれているのでありましょう。
「あゆみ先生、折野先生、それから皆さん、部屋の中に寿司と飲み物を用意しておりますので、こちらで少しおくつろぎください」
 案内役の堂下はそう云って掌を前に出して皆を部屋の中に誘うのでありました。「師範控えの間の総士先生が動かれたら、すぐにこちらにお知らせに参ります」
「堂下、お前も色々大変だったようだな」
「押忍。有難うございます」
 万太郎が労わりを述べると、堂下は目立たない笑みを頬に浮かべるのでありました。
 広間の中には専門稽古生の宇津利益雄が居るのでありました。この広間の取り仕切りを任されているようで、宇津利は万太郎達を認めるとすぐに近寄って来るのでありました。
「あゆみ先生、折野先生、こちらへどうぞ」
 宇津利は律義らしい物腰でお辞儀をした後、万太郎達を空いているテーブルに案内するのでありました。万太郎達はその案内の儘に四人でテーブルを囲むのでありました。
 部屋の中には興堂派の古い門弟達や地方の支部長クラスが屯しているのでありましたが、居心地悪そうに単座している男も何人か居るのでありました。これは恐らく各武道各流派の代表者のお伴で会葬について来て、その帰るのをここで待っているのでありましょう。
「おや折野先生、それにあゆみ先生、お久しぶりです」
 そう云ってテーブルに近づいてきたのは、興堂派の専門稽古生で既に顔見知りである目方吾利紀でありました。「おや、それに随分懐かしい顔もあるな」
 目方は良平の方を見ながら笑いかけるのでありました。
「ああこれは。確か、目方さん、でしたよね?」
 良平が座った儘でお辞儀するのでありました。
「おう、俺の名前を覚えていてくれたようだな」
 目方はそう云いながら良平の横にその巨体を並べて座すのでありました。「お前さんはもう、常勝流の内弟子は止めたのかな?」
「ええ。もう大分前に」
「今は、全く常勝流とは無関係なのかい?」
「いや、鳥枝建設の常勝流愛好会で細々と稽古していますよ」
「前は内弟子としてあれだけ武道をガンガンやっていたのに、勿体ないな」
(続)
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