So-net無料ブログ作成

お前の番だ! 338 [お前の番だ! 12 創作]

 狭間がやや及び腰で万太郎の血走った眼に向かって質問を投げるのでありました。
「今日は偶々朝に三先生と内弟子が揃ったので、急遽剣術稽古をする事になったんだ」
「あのう、僕等は参加しなくても良いのでしょうか?」
 片倉が、これも恐る々々と云った風情で訊ねるのでありました。
「ああ、三先生と内弟子だけの稽古だ。お前達は道場回りの掃除とか、日課通りの事をしていれば良い。仕事が済んだら内弟子控え室の方で屯していろ」
「私達は、参加は出来ないのですね?」
 ジョージがやや残念そうな顔で訊くのでありました。
「そうだな。我々だけの稽古と云う事で始めたから、参加には及ばない」
「押忍。では、見学はしても良いのですか?」
「見学か。・・・そうだな、まあ、見学なら構わんだろう。しかしお前達が道場仕事を終えた頃にはもうこの稽古は終わっているかも知れんぞ」
 この三人が稽古を見学したいと云っているが如何取り計らいましょうか等と、態々三先生にお伺いを立てるまでもなかろうと、万太郎はそう応答するのでありました。
「おい折野、今度はお前が来間の相手をしろ」
 三人がドタバタとその場から去ると鳥枝範士の声が万太郎の耳に届くのでありました。万太郎はふり返ってすぐさま窓際から道場中央に走るのでありました。
 この面子での剣術稽古なら、敢えて組形稽古をするのもつまらないから乱稽古をやろうと云う事になったのでありました。乱稽古と云うのは自由に剣技をお互いに駆使しあう、所謂試合形式の稽古でありますし、通常の稽古では殆ど行わない稽古でありました。
 来間は道場中央で木刀を片手に持って肩で息をしているのでありました。恐らくあゆみとの乱稽古の直後で、あゆみに好きな様にあしらわれて息が上がったのでありましょう。
 万太郎は木刀を下段に構えてその来間と対峙するのでありました。その万太郎の構えを見て、来間も慌てて正眼に構えるのでありました。
 しかし万太郎には来間の及び腰が剣先の微妙なブレとして見えるのでありました。万太郎は下段の儘来間との間合いをゆっくりと歩み足につめるのでありました。
 来間は即座に後ろに下がるのでありました。万太郎は無表情の儘、如何にも無造作に進み続けて来間を羽目板際まで圧倒するのでありました。
 それ以上下がる余地を失って居竦んだ来間は、急場の一策で一挙に前に跳んで万太郎の腹を目がけて突きを入れようとするのでありました。その攻撃を万太郎は充分前から読んでいたのであり、寧ろそうせざるを得ないように万太郎が仕向けたと云う風でありました。
 依って万太郎は来間の突きをごく小さく体を開いて際どい辺りで往なすと、一瞬目標を失って静止した来間の木刀を下から斜め上方に跳ね上げるのでありました。来間の木刀は弧を描いて来間本人の肩口に巻きつくように畳まれるのでありました。
 万太郎はそこに、上方に斬り上げた木刀の刃を素早く返して、来間の首筋目がけて裂帛の気合の発声と伴に袈裟に切り下げるのでありました。万太郎のふり下ろした木刀は来間の首から一センチの辺りでピタリと停止するのでありました。
(続)
nice!(12)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 12

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0