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お前の番だ! 331 [お前の番だ! 12 創作]

 来間が、眩しそうに目を細めている万太郎に話しかけるのでありました。万太郎と同じに来間も、その突然の呼び出し音に何やら胸騒ぎがし始めたようであります。
 電話は六回ほど鳴って止むのでありました。恐らく居間のすぐ隣の部屋で寝ているあゆみが、急いで起き出して受話器を取ったのでありましょう。
 息を殺して様子を窺っていると、廊下で足音がして是路総士の部屋の障子戸を引き開ける音が聞こえ、その後すぐに是路総士も居間の方に向かう気配が伝わってくるのでありました。廊下で立てる二人の足音から、ただならぬ緊迫感が伝わってくるのでありました。
「ちょっと見てくる」
 万太郎はそう云って脚にかけた儘の布団を跳ね除けるのでありました。来間が心配そうな顔で部屋を出る万太郎を見送るのでありました。
 居間では是路総士とあゆみが廊下に背を向けて、電話機の前に寄り添って佇んでいるのでありました。万太郎が見ていると、丁度是路総士が受話器を戻すのでありました。
「何事かあったのでしょうか?」
 開いた儘の障子戸の辺りから万太郎が中の二人に、急に声を上げて驚かせないように小声で言葉を投げかけるのでありました。
「道分先生が亡くなったようなの」
 あゆみが険しそうな顔で万太郎の方をふり向くのでありました。
「え、道分先生が、ですか?」
 万太郎が訊き返すと是路総士が陰鬱気な顔で頷くのでありました。
「今の電話は花司馬君からだ」
 是路総士はそう云いながら、座卓の何時も自分が座っている位置に移動するのでありました。あゆみも座卓の方に移って、廊下で立っている万太郎を手招くのでありました。
「道分先生は今、確かハワイに行かれているのですよね?」
 万太郎が訊くと是路総士は瞑目した儘頷くのでありました。
「向こうで、急に倒れた、という事らしい」
「何でも向うの道場の責任者の人が、朝になって食事に誘おうとホテルの部屋をノックしたけど、何時も早起きの筈の道分先生なのに一向に返事が返ってこないものだから、心配になってフロントに話して鍵を開けて貰ったら、ベッド脇の床に道分先生が俯せに倒れていたらしいのよ。それで急いで救急車で病院に搬送したと云う事らしいの」
 あゆみが云い添えるのでありました。
「ハワイからそう云う連絡が入って、それで花司馬先生が、事が事だから、急遽こちらに電話を入れた、と云う事ですかね?」
「そうね。始めは道分先生の家に連絡が行って、威治さんから花司馬先生のお宅に連絡が入ったらしいの。花司馬先生は今から神保町の道場で待機するっておっしゃっていたわ」
「あのう、ここに来間を呼んできてもよろしいでしょうか?」
 万太郎は是路総士にお伺いを立てるのでありました。「あいつも先程の電話の音で目が覚めて、部屋で起きて心配していますから」
(続)
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