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お前の番だ! 242 [お前の番だ! 9 創作]

 鳥枝範士があゆみの重苦しそうな表情に向かって訊くのでありました。
「これから、朝稽古中にちょっと顔出ししてこようと思っています」
「ああそうか。それならワシも一緒に行って、この間の事情を説明して、総士先生にいただくべき裁可をいただいてくるとしようか」
「手術の次の日だから、そんな長話しをして大丈夫かな?」
 寄敷範士が横から鳥枝範士に話しかけるのでありました。
「それもそうだな」
 鳥枝範士は少し考えるのでありました。「まあ、話して大丈夫のようなら話すが、そうでないのならまた後日とするか。しかし取り敢えず、総士先生のお顔だけは見ておきたいから、矢張りワシはあゆみと一緒に病院に行ってこよう」
「鳥枝先生は朝稽古で見所に座る役目があります」
 万太郎が口を挟むのでありました。
「ああそだった。だけどまあ、先に話した通りワシは稽古に口出しは何もしないで、ただ黙って見所に座って睨みを利かせているだけだから、これは寄敷さんに代わって貰おうか。寄敷さんは、今日はこれから何か用事でもあるかい?」
「いや、代わるのは別に構わんけど」
 寄敷範士が気安く請け負うのでありました。
「ではそうして貰おう」
 鳥枝範士はそう云って、もうすっかり冷めた茶を一気に飲み干すのでありました。
「病院には誰かにつき添わせますか?」
 師範控えの間から退出して、食堂へ向かう途中の廊下で万太郎は一歩先を歩むあゆみの、後ろに束ねた艶やかな黒髪に向かって訊くのでありました。
「ううん、その必要はないわ」
 あゆみがふり返るのでありました。束ねられた黒髪の先が小さく躍るのでありました。
「鳥枝先生もご一緒ですが?」
「そうね。でも、必要ないわ。病院の正式な面会時間は午後からだし、急用でもないのに時間外に三人で押しかけると云うのも、何か如何にも無神経な気がするし」
「押忍。判りました」
 万太郎は歩を止めないで浅くお辞儀するのでありました。
 その後万太郎は受付兼内弟子控え室に回って、八王子と小金井の出張指導者が鳥枝範士と寄敷範士に代わった事を中に居た来間と片倉と山田、それにジョージに告げるのでありました。片倉と山田は両範士に代わったと聞いてやや顔色を固くするのでありました。
「両先生からどんな話しがあったのですか?」
 来間がやや不安そうな物腰で訊ねるのでありました。
「これから先総士先生がご復帰になるまでは、余所への出張指導は鳥枝先生と寄敷先生が担当される事になった。依ってあゆみさんと自分とで総本部道場の稽古は総て受け持つ」
「あゆみ先生と折野先生はこれから先、総本部道場に常駐されると云う事ですか?」
(続)
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