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お前の番だ! 241 [お前の番だ! 9 創作]

「寄敷さん、どっちが良いかな?」
 鳥枝範士が横の寄敷範士の顔を覗くのでありました。
「どちらかと云うと、帰りを考えたら家に近い小金井の方が好都合かな」
「それじゃ、私が八王子に行こう」
 二人の出張先の割りふりはあっさり決まるのでありました。「助手は誰だ?」
「八王子の方は片倉が、小金井は山田が助手を務める予定です」
 万太郎がすぐに応えるのでありました。
「よし、判った。二人には折野から予め伝えておけ」
「押忍。承りました」
「今日の総本部での昼以降の稽古は、何か予めお考えの指定の技がありますか?」
 あゆみが鳥枝範士の顔を見るのでありました。その日の総本部での稽古は、朝の専門稽古では万太郎が中心指導を担当するので既に稽古予定の技は決まっているのでありましたが、昼と夕方の専門稽古と夜の一般門下生稽古は鳥枝範士が担当する筈でありました。
「お前達に一切任せる。稽古内容は二人で自由に決めろ」
「押忍。承りました」
 あゆみはやや不安気な表情で頷くのでありました。朝稽古が終わったら、二人で少し摺りあわせをしなければならないだろうと、万太郎は黙った儘考えるのでありました。
「当初は少しまごつくかも知れんが、云ってみれば総本部道場は今日からグッと若返って、あゆみと折野が前面に出る新体制になるわけだ」
 鳥枝範士がそう云うのでありましたが、これは二人を励ます言と取るべきか一種の脅しと取るべきか、万太郎は少し考えるのでありました。
「総士先生のご復帰まで、非力ながら頑張ってみます」
 万太郎は一応決意表明の心算でそう云ってお辞儀するのでありました。
「いやいや、総士先生が復帰された後も、あゆみと折野の新体制は変わらないぞ」
 寄敷範士が顔を横に一度ふるのでありました。
「この先ずうっと、そうなるのですか?」
 あゆみの眉宇の困惑の色が一層濃くなるのでありました。
「そう云う事だ。少なくとも私と鳥枝さんはそう云う心算だ」
「総士先生も賛同なさるだろうよ」
 鳥枝範士が力強く頷くのでありました。
「この先ずうっと、となると如何にも大任ですね。あたし達に務まるでしょうか?」
「否が応でも努めて貰う」
「押忍。承りました」
 万太郎はもう一度、今度はやや深めにお辞儀するのでありましたが、横に座っているあゆみは無言を守って小難し気な表情の儘で俄には頷かないのでありました。あゆみの方は、この思いがけない両範士からの通達を相当重く受け止めているようでありました。
「あゆみは、今日も病院に行くんだろう?」
(続)
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