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お前の番だ! 240 [お前の番だ! 8 創作]

「別に今回の事を潮に、ワシ等が楽を決めこもうと云う魂胆ではない」
 鳥枝範士があゆみと万太郎をジロリと見るのでありました。「考えてみればワシや寄敷さんも総士先生と同じくらいの歳回りだから、この先思いもしない事態が出来するやも知れぬと考えてな、今の内から若い者へ仕事を委譲しておいた方がよかろうと云うわけだ」
「ま、歳を重ねると色々な弱気が段々頭をもたげてくるものだ」
 寄敷範士が自嘲的な笑いを口の端に浮かべるのでありました。
「両先生共に、未だ充分にお若いじゃありませんか」
 あゆみが寄敷範士の言に首を何度か横にふるのでありました。
「若い心算でも、何かあってからでは色々まごつく事になる」
「僕達が担当している、支部への定期的な出張指導はどうするのですか?」
 万太郎が口を挟むのでありました。
「総本部の稽古を二人に総覧して貰うわけだから、あゆみと折野が今まで行っていた出張指導に関しては、鳥枝さんと私で代わる事としたよ」
 寄敷範士が鳥枝範士の顔をちらと見ながら云うのでありました。
「幸い今は若いヤツ等が数人総本部に屯しているから、そう云う奴等に助手として働いて貰えば、出張指導の方も今まで通りで障りはないだろうよ」
「それは、支部の門下生も僕が行くよりは両先生の指導を仰げる方が返って好都合と云うものでしょうし、準内弟子の若い連中も、僕なんかについて出張に行くよりは、両先生に助手としてついて行く方が色々勉強にはなるでしょうが」
「鳥枝先生も寄敷先生も、お二方共別に仕事を持っていらっしゃるのに、各曜日夫々の時間の、それに方々に散らばっている支部への出張がお出来になるのですか?」
 あゆみが首を傾げて訊くのでありました。
「なあに、ワシは会長職だから社には週に二日も顔を出せばそれで済む。寄敷さんも今は主にご子息が事務所を切り盛りしているようだから、こちらもさして問題がないだろう」
「依って、二人に新しい役職名を授与する事にしたよ。あゆみは総本部道場長、それから折野は道場長代理とする。筆頭教士、教士の号はその儘だが」
 寄敷範士が腕組みした腕を座卓について、少し身を乗り出すくのでありました。
「筆頭教士の号、それから教士号は総士先生の専権任命事項だからその儘だ。総士先生が入院されて今日で六日だが、その間バタバタしていたが、今後はこう云う体制で総本部道場を運営して行く事とする。まあ、今日にでも総士先生の裁可をいただきに病院まで行くつもりだが、既に一任をしていただいているからこの線で纏まるだろうよ」
 寄敷範士とは逆に鳥枝範士が上体を反らして云うのでありました。
「出張指導は今日からそう云う事になるのでしょうか?」
 あゆみが鳥枝範士の顎を見ながら訊くのでありました。
「そうだ。今日の出張指導先は、・・・」
 鳥枝範士が前に置いた紙を見るのでありました。
「夜に僕が八王子で、あゆみさんが小金井に行く予定になっています」
(続)
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