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お前の番だ! 239 [お前の番だ! 8 創作]

「お茶のお代わりをお持ちしました」
 あゆみはそう云って、手にしていた盆から新たに淹れた茶を両範士の前に置くのでありました。あゆみが茶を置く前に万太郎が前の茶を両範士の傍から下げるのでありました。
「色々寄敷さんと話した結果だが」
 鳥枝範士がそう前置きした後、新たな茶を一口啜るのでありました。「総士先生が本格的にご復帰になるまで、二か月か三か月か、或いはもう少しの期間かかるかも知れんが、その間、この総本部の稽古はあゆみと折野に主導して貰う事とした」
「二人で総本部の稽古の総てを取り仕切れ」
 寄敷範士がその後に続けるのでありました。
「ええと、どう云う事でしょうか?」
 あゆみはその指示が上手く呑みこめないので、交互に両範士の顔を窺うのでありました。万太郎の方もあゆみと同じに困惑顔をするのでありました。
「ワシ等二人は、どちらかがいる時は総士先生の代わりに一応見所に座るが、稽古内容にあれこれ口出しはせん。二人の了見で総本部の稽古を総覧せよ」
「ああ、そうですか。・・・」
 あゆみは未だ上手く納得出来ないような顔で返事するのでありました。
「いやな、丁度良い機会だから、お前達二人がこれから先の総本部の稽古に対する責任を、全面的に負えと云っているわけだよ。稽古ばかりではなくて、各支部への通達や出稽古、全門下生の管理とか、道場の運営面でも二人が主導してやっていけと云う事だ」
 寄敷範士が少し具体的なところを云うのでありました。
「勿論、判らないところはアドバイスするが、指示はなるべく出さないようにする。要するに総士先生がやられていた仕事、それにワシや寄敷さんがやっていた道場運営に関する全体的なところも、これを機会にお前達にすっかり任せると云う事だな」
 鳥枝範士が手にした湯呑の上に泥む湯気を一吹きするのでありました。吹かれた湯気があゆみと万太郎の方にジワリと漂ってくるのでありました。
「それは金銭の出納とかもでしょうか?」
 あゆみが身を乗り出しながら訊くと、殆ど消えかけてはいるものの、中空の湯気が少し鳥枝範士の方に後退するのでありました。
「勿論そうだ」
 鳥枝範士がそう云う時にはもう、湯気は跡形もなく消えているのでありました。「お前達は既に大体は、ワシ等がやっていた仕事がどんな按配のものかは掌握しているだろう?」
「それはそうですけど、具体的な辺りは全く判りません」
 あゆみが眉間の気後れの色を濃くするのでありました。
「まあ、そんなに小難しい事はない。帳簿にしても日々の出納をちゃんと記録すれば済む。後は寄敷さんの事務所で今まで通り会計処理するから」
「帳簿のつけ方とかは追々私が教えるよ」
 寄敷範士が頼もし気に笑いかけるのでありました。
(続)
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