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お前の番だ! 231 [お前の番だ! 8 創作]

 良平はあゆみを間に挟んで、やや前屈みになって万太郎に訊くのでありました。
「そうですね。何時もは六時半には居間にお出でになるのに、姿がないので僕が寝所に呼びに行ったのです。そうしたら布団から半身出した儘で動けなくなっていらしたのです」
 万太郎がそう云うと良平は思わずと云ったように顔を顰めるのでありました。
「で、急いで鳥枝先生に電話して、それから全く起き上がれないものだから救急車を呼んで、鳥枝先生が指定したこの病院に、あたしがつき添って搬送して貰ったのよ」
 万太郎の後に続いて、これは真ん中に座るあゆみが云う言葉でありました。ここまで聞いてから、良平は万太郎とあゆみの分の弁当と一緒に買ってきたのであろう、自分の缶コーヒーのプルリングを引き開けるのでありました。
「総士先生は痛くて動けなかったのですか?」
 良平は缶コーヒーを一口飲んでからあゆみに訊くのでありました。
「腰に痛みもあったようだけど、要するに運動神経の麻痺で動けなかったみたい」
 良平が眉間に皺を寄せて何度か頷くのでありました。
「で、結局何という病名なのですか?」
「腰椎変性による脊髄圧迫からくる、・・・何とかかんとか」
「何やら小難しい病名ですね」
「要するに腰の骨の五番目と四番目が変形していて、中を通る脊髄とか、末梢神経が圧迫されてそれで脚が麻痺して動かなくなったって事らしいの」
「聞いているだけで重病って感じですねえ」
 良平が戦くように肩を竦めるのでありました。
「でも手術で骨を整形して、ボルトで固定すれば神経圧迫は多分なくなるんだって」
「ボルトで固定、ですか。まるで大工仕事みたいですね」
「それに近いって、ここの院長先生が説明の時に冗談でおっしゃっていたわ」
「それに、重症は重症だけど、それが即命に関わる、みたいな病気ではないそうです」
 万太郎が食し終えた弁当を片づけながら話しに加わるのでありました。
「その辺は安心したけど、しかし何だなあ、総士先生がそんな大病を患っておられるようには、全く見えなかったけどなあ、今まで」
 良平が缶コーヒーを飲み干すのでありました。
「腰椎の変性については、直接の原因は随分古い傷が原因だろうって、院長先生はおっしゃっていたわ。もう何十年も前の」
 あゆみも弁当を食べ終えて、貰った缶入りの茶を一口飲んでから云うのでありました。
「鳥枝先生に依ると、戦争中に総士先生は中国に行かれていたけど、その折、詳しい話は聞けなかったけど、腰に銃弾を受けて大怪我をされた事があるそうです」
 万太郎はあゆみから弁当の空の容器を受け取って、それを自分の物とあわせてコンビニのポリ袋に仕舞いながら云うのでありました。
「ほう、俺は今までその話しは知らなかったなあ」
「何でも、誰かを咄嗟に庇おうとしてご自分が撃たれたと云うお話しでした」
(続)
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