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お前の番だ! 195 [お前の番だ! 7 創作]

「さてそうですなあ、ではこの、澄ましスープとサラダのついたオムライスセット、と云うのをいただきましょうかなあ」
「お肉とかお魚の料理でなくて良いのですか?」
「ええ、夜にあんまり脂っこいのを食すと、寝るまで胃が凭れますので」
「ああそうですか。で、あゆみちゃんは?」
 大岸先生は今度は斜め向かいに座るあゆみに顔を向けるのでありました。
「あたし、どうしよう。・・・」
 あゆみはそう云って悩まし気な顔で未だメニューを見ているのでありました。
「じゃあ、万ちゃんは?」
 大岸先生は正面の、あゆみと並んで座っている万太郎に言葉を向けるのでありました。
「僕はこのチキンカツレツセットと云うのにします」
 メニューには一緒にポークカツレツセット、と云うのが載っているのでありました。どちらかと云えば万太郎はポークカツレツの方が好物なのでありましたが、横に添えられている写真に依ると、チキンカツレツの方が皿からはみ出す程に圧倒的に大ぶりであるのに絆されて、竟々そちらを選んで仕舞ったと云う按配でありました。
「じゃあ、あたしポークカツレツセットにしようかな」
 あゆみがようやく注文を決めるのでありました。
 大岸先生は近くを通りかかった、白シャツに黒いズボンで蝶ネクタイを締めた古風なスタイルの中年のウエイターを呼び止めて、自分の白身魚のフライセットと云うのも加えて注文をするのでありました。それから序のようにと云うのか、当然の事のようにと云うのか瓶のビールを二本と、野菜サラダの大皿と枝豆を四人分一緒に頼むのでありました。
「なかなか昔風の洋食屋さんですね」
 是路総士が店内を見回しながら大岸先生に云うのでありました。
「何でもこの店は戦後すぐからずうっと、上野でやっている洋食屋さんなんだそうです。前はもっと公園の方にあったらしいのですが、十年前に街中のこちらに移ったのだそうです。お味がとっても良くて、あたしは上野に用がある時には時々立ち寄るんですよ」
 確かに今時の流行のレストランとか云った感じでもなく、高級を売り物にしている風でもなく、気取りも気負いもなく、昔ながらの佇まいで昔から出している料理を提供していると云った感じの店でありましたか。万太郎が学生時代に時々行った大学近くの学生相手の洋食屋を、もう少し大人びた風にして、やや値段を高くしたと云った体裁でありますか。
 早速出てきたビールを注いで貰いながら、万太郎に是路総士が訊くのでありました。
「折野とあゆみは明日も展示会の手伝いかな?」
「押忍、・・・じゃなかった、はい。その予定です」
「道場の方がお休みと云う事なので、二人には、申しわけないけど明日も今日と同じに手伝ってもらう事になっていますのよ」
 大岸先生が、あゆみが傾ける瓶をグラスに受けながら云うのでありました。
「本当は明後日からもお手伝いさせて貰いたいんだけど、道場の方があるし」
(続)
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