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お前の番だ! 124 [お前の番だ! 5 創作]

「それはそうだ」
 新木奈は自分の云い草が如何にも傲慢だと周りに受け取られるのを恐れてか、横の三方の方に慌てて顔を向けて頷いて見せるのでありました。「今時そんな額の給料があるのかと思って、少し驚いただけだが、まあ、確かに普通のサラリーマンとは違うからなあ」
「毎日揉まれる満員電車、嫌な課長に頭を下げて、・・・なんと云うしがないサラリーマンよりは、俺はこの面能美さんと折野さんの方が、薄給ではあっても余程羨ましく見えるね」
 三方は歳上であっても内弟子の二人をさんづけで呼ぶのでありました。同じ常勝流総本部道場門下生として、より過酷な修錬をしている二人に敬意を表しての事でありましょう。
「あれ、その科白、クレージーキャッツの歌にありませんでしたっけ?」
 良平が三方に笑いかけるのでありました。
「お、面能美さんは知っているんだ、この歌を」
 三方が目を見開くのでありました。
「ええ。確かその後に、貰う月給は一万なんぼ、とか云うんでしたよね」
「そうそう。昭和三十年代のサラリーマンの給料は一万なんぼだったようだ。しかし俺より大分若いのに、面能美さんはどうしてその歌を知っているの?」
「何年か前にテレビの深夜番組か何かで、クレージーキャッツの映画を時々やっていたでしょう。自分は好きで欠かさず見ていたのですよ」
「おお、なんと云う奇特な御仁である事か」
 三方は良平に酒を注いでやるのでありました。「俺は小学校の頃に、夏休みとか冬休みとかに東宝の怪獣映画を見に行った折に、同時上映でクレージーの映画もやっていて、それでいつの間にか、どちらかと云うと怪獣映画よりもクレージーの映画の方がお目当てとなって仕舞ったんだな。そんな俺も、慎に奇特な小学生だったと云う事になるか」
「加山雄三の若大将シリーズも同時上映されていましたよね」
「そうそう、それに森繁久彌の社長シリーズね。してみると面能美さんも小さい頃、東宝の怪獣映画によく行った口か?」
「ええ。近所に住む高校生の従兄に連れて行って貰ったりしましたよ。その頃はクレージーキャッツの映画をちっとも面白いと思わなかったのですが、大学生になってから偶々テレビの深夜映画で見てファンになったのです」
 万太郎はクレージーキャッツと云うコミックバンドの名前は知っていたものの、その主演した映画とかものする音楽等は殆ど知らないのでありました。スーダラ節、とか、ハイそれまでよ、なんぞと云う曲は何となく部分的に知っているのでありましたが。
 万太郎だけではなくどうやら新木奈もその辺には精しくはないようで、クレージーキャッツで盛り上がる良平と三方に興醒めの顔を向けているのみでありました。
「ところで折野君は熊本の出身だったよな?」
 良平と三方の話題に入り切れない新木奈が万太郎に話しかけるのでありました。
「ええそうです」
「俺の親類が長崎の方に居るよ」
(続)
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