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お前の番だ! 69 [お前の番だ! 3 創作]

「本日からお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします」
 万太郎は顔を伏せた儘で云うのでありました。
「はいよろしく」
 是路総士も威儀を正して万太郎に頭を下げるのでありました。「面能美、お前が怠けようと云う魂胆で、こんな早い時間から折野君を呼びつけたんだな?」
 是路総士は良平の方に顔を向けて云うのでありました。
「いや、そう云うわけではない、事もないですが。・・・」
 良平はあっさり認めて頭を掻くのでありました。なかなか愛嬌のある男であります。
 台所からお茶を載せた赤い漆塗りの丸盆を持ってあゆみが座敷に入ってくるのでありました。あゆみは縁側で畏まる万太郎の方に可憐な笑顔を向けるのでありました。
「昨日は色々有難うございました。本日からよろしくお願いいたします」
 万太郎はあゆみに対しても丁寧な座礼を行うのでありました。座卓の横に座ったあゆみは、手にしていた盆を自分の横に置いて万太郎の方に向かって両手をついて矢張り丁寧なお辞儀をするのでありました。
「こちらこそよろしくお願いします」
「それでは早速朝の仕事にかかります」
 良平がもう一度お辞儀をして立ち上がるのでありました。万太郎も少し遅れて一緒に立つのでありました。
「ほんじゃあ、お前さんは道場の掃除だ」
 納戸兼内弟子控えの間に帰ってくると良平は万太郎に指示を出すのでありました。「昨日の夜に一応の掃除はしてあるから、壁の木刀かけとか神棚の上とか名札板とか細々したところ、それに吊るしてある籠手なんかの小物の埃を掃って乾拭きしておいてくれ。それから木刀も一本々々丁寧に拭いて揃えておいてくれよ。俺は母屋の庭の掃除をしてくる。ああそれから、道場のどこかの蛍光灯が切れかかってちらちらしていたから、換えておいてくれ。電気をつければすぐ判るだろう。換えの蛍光灯はそこの棚の一番上にあるから」
 良平は後ろの整理棚を指差すのでありました。
「判りました」
「呑気にやらないで手際良く三十分で済ませてくれよ。済んだらここで待っていてくれ」
「玄関に脱いだ僕の靴はどうすればよいのでしょう?」
「ああ、横の壁に靴入れがあるからそこの一番下の段に入れておけば良いや。一番下の段が俺とお前が使って構わない段だ」
「判りました」
 万太郎はもう一度頷くのでありました。
「道場の雑巾とか箒とか木刀拭きとか脚立なんかは、奥の壁の物入れの中にあるからな」
「判りました」
「道場では、判りました、じゃなくて返事は、押忍、だ」
「押忍」
(続)
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