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もうじやのたわむれ 350 [もうじやのたわむれ 12 創作]

 発羅津玄喜氏が首を傾げるのでありました。
「卑しさが卑しさとしての意味を持っていない社会なのでしょうね、準娑婆省の社会は」
 これは拙生の右横に座っている、逸茂厳記氏の言葉であります。
「まあつまり地獄省と違って文化的に錬れていない未開で野蛮な儘の省、だと云う事だな」
 補佐官筆頭が体を元に戻しながらクールに云うのでありました。
「地獄省には足元を見て割増金を要求するとか、政府高官に対して賄賂を贈るとか、コネによる就職の斡旋を依頼する、なんと云う不正は一切ないのでしょうか?」
 拙生が誰にともなく訊くのでありました。
「いや、恥ずかしながら、ありはします。しかしそれに対しては厳正な法的処罰があります。地獄省は法治国家、いや違った、法治省家ですからね。それにそう云う行為を恥じる心性もあります。道徳心とか倫理とか、鬼としての、或いは霊としての矜持も我々は持ちあわせております。地獄省の社会自体にも、非を非とする健全性がちゃんとありますし」
 補佐官筆頭がまた体を後ろに捻りながら、些か意気込んで云うのでありました。
「今は未開の儘だとしても、将来に於いて文化的に錬れる事はあるのでしょうかね?」
「どうでしょうかね。準娑婆省は地獄省とか極楽省との交流があまりありませんから、将来的に文化が、或いは省としての品性が磨かれる事は殆どないかも知れませんね」
「私が将来またこちらの世に来た時までに、少しは変わっているでしょうかね?」
「いや無理でしょう。貴方様がこちらにまたいらっしゃるのは、娑婆時間で数十年後と云うわけでしょうから、そのくらいの時間では連中の了見は何の変化もしないでしょうね」
「尤も、次の時は亡者様はすんなりと生まれ変わりになられるでしょうから、準娑婆省の方に来るなんと云う異例の事態は、先ず発生しないでしょうね。生まれ変わった後も、地獄省の住霊になられたら、余程の事がない限り準娑婆省との縁はないでしょうし」
 逸茂厳記氏が右横から口を挟むのでありました。
「ま、次回に香露木閻魔大王官がまたもやとんでもない不手際をやらかさない限りは、逸茂君の云う通り、準娑婆省との縁はないと云う事でしょうなあ」
 補佐官筆頭が捩じった体を元へゆっくり戻しながら云うのでありました。
「そう云えば次回、私がこちらの来た時、審問官さんや記録官さんの審問とかは受けなくても済むし、思い悩みの三日間もないのでしたよね?」
「一応もう、省略と云う事になります」
 補佐官筆頭がまたまた後ろに体を捩じるのでありました。
「では閻魔大王官さんの審理室に真っ直ぐに伺えば良いのでしょうかね?」
「そうですね、審問室の方はパスしますから、すぐに審理室へお越し願う事になります。ま、その審理にしても、念のための確認と云うだけですけど」
「娑婆にいる間に心変わりした場合、生まれ変わり希望地を変更出来るのでしょうか?」
「まあ、出来ないこともないですが、しかし大体、亡者様が娑婆にお戻りになったら、今回の閻魔庁の記憶は綺麗さっぱりなくなって仕舞うはずです」
「ああそうなのですか?」
(続)
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