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もうじやのたわむれ 328 [もうじやのたわむれ 11 創作]

 それから、どう云う技術部門かは判らないと補佐官筆頭が云っていた、しかしまあ恐らく、こちらの世と向こうの世との関係を取り持つための技術であろうところの技官をしていると云う、娑婆の設計事務所とかによくいそうな、ネクタイを締めて紺色の作業着を着た、娑婆時代の名前が鶴屋南北でそれを改め今は亀屋東西氏、それに、大酒呑太郎氏と同年配と云った風貌で、白髪で首が前に落ちていて、足元が覚束なさそうにトボトボと如何にも老人ぽく歩く、銀鼠色の格子縞の和服に博多の帯を締めて五つ所紋の黒い羽織を着た、林家彦六氏と云う顔ぶれでありましょう。屹度前に今回と同じ用件で補佐官筆頭が出張した折、矢張り大岩会長と一緒にいたと云う、準娑婆省政府筋の鬼だか霊だかに違いないと思うのであります。前の亡者逆戻り案件を処理した同じメンバーの揃い踏みであります。
 その三鬼、或いは一鬼と二霊が空いている席に着くのでありましたが、その折大酒呑太郎氏と思しき仁が、ニヤニヤと笑いながら手を挙げて、補佐官筆頭に軽く挨拶を送るのでありました。補佐官筆頭はその大酒氏の挨拶に、無愛想に頭を下げるだけでありました。
 大岩会長の司会進行の下に拙生の娑婆逆戻り算段の話しあいが始まるのでありました。
「今回も、こちらの亡者さんを娑婆にお戻しすれば良いのですね?」
 大岩会長が拙生を、掌を上にした手で指し示しながら補佐官筆頭に訊くのでありました。
「先に電話でお話しさせて貰った通り、度々ご面倒をおかけして私としましては慎に恐縮至極ではありますが、つまりそう云う事でございます」
 補佐官筆頭がお辞儀しながら返すのでありました。
「電話の後こちらで調べましたところ、未だこちらの亡者さんの亡骸は荼毘にふされてはいないようですから、前の時と同じで比較的簡単な作業で片がつくかと思いますが、今回、前とは違う何か特別なご要望とかはありますでしょうかねえ?」
「いえ、特には。前の時と同じで何ら問題ないと思います」
 補佐官筆頭がそう応えるのを聞きながら、拙生はどうせなら前の肉体よりは、前途有望なもっと若いヤツの体に逆戻る方が良いのに、等と秘かに考えるのでありましたが、そんな虫の良い要望は屹度顰蹙を買うであろうから、口の外には漏らさないのでありました。それにそんな要望に一々応えるとしたら、何かと小難しい問題とか処理があれこれ多く発生しそうだと想像出来るので、ここの皆からげんなり顔を向けられるだけであります。
「判りました。では娑婆に逆戻る段取りの説明とか、差し当たり亡者さん自身にやって貰う手続きとかの説明なんかを、こちらにいる亀屋東西技官の方からさせましょう」
 大岩会長がそう云いながら亀屋技官の方を見るのでありました。
「ああどうも、準娑婆省娑婆ちょっかい技術部の亀屋です」
 亀屋技官が自己紹介しながら軽く頭を下げるのでありました。「ではそこの亡者さんに説明責任上、逆戻る段取り辺りから、掻い摘んで案内させていただきます」
「いや、ええと、その前にちらと疑問に思ったところをお聞きしても大丈夫ですか?」
 拙生は亀屋技官の話しの腰を折るのでありました。
「まあ、そんなに時間がないとは云え、少しくらいなら大丈夫でしょう」
 これは亀屋技官に代わって大岩会長が云うのでありました。「どのような疑問で?」
(続)
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