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もうじやのたわむれ 327 [もうじやのたわむれ 11 創作]

「どうもご丁寧なお言葉を有難うございます。結局浮かばれない亡者と相なりまして、大岩会長さんのお手を煩わせる事となった次第です。しかし私としましては、実はちっとも力落していないところが、慎に以って浮かばれない亡者の真骨頂と云った按配で」
 拙生は自分でも何を云っているのかよく判らないような不細工な挨拶の言葉を、お辞儀の頭を起こしたので再度、補佐官筆頭の肩越しに現れたところの大岩会長のしめやか顔に向かって、頭を掻きながら緩く投げるのでありました。
「まあ、ここで話しをしていても埒が明きませんから、別室の方に行きましょうか」
 大岩会長が手をドアの方に伸ばすのでありました。
「では、我々は一端奪衣婆港駐屯地に帰っております。用件が済みましたら電話でご連絡いただければ、またすぐにお迎えに参上いたします」
 これは段古守大尉が補佐官筆頭に云う言葉でありました。
「ああそうですね。街中の移動中の警護をどうも有難うございました。夜までには片づくと思いますので、また宜しくお願いいたします。段古大尉の携帯電話に連絡を入れますよ」
「はい。了解しました」
 段古大尉はそう云って、補佐官筆頭に気をつけをして敬礼するのでありました。部下の二鬼の防衛隊員もすぐに段古大尉に倣って、きびきびとした如何にも兵隊らしい端正な挙措で敬礼するのでありました。補佐官筆頭と逸茂厳記氏、それに発羅津玄喜氏が敬礼を返すのでありましたが、矢張りどこか娑婆の落語家の林家三平師匠の、どうも済みません、みたいな感じになるのでありました。文官は妄りに武官の真似はしない方が良いと云う一例であろうかと、拙生は何となく考えるのでありました。依って拙生は、ここまで警護してくれた防衛隊員三鬼に対しての感謝の表現を、少し長めのお辞儀にするのでありました。
 全員が廊下に出て、帰る防衛隊員三鬼と別れて、一亡者と、三鬼の閻魔庁派遣組は大岩会長の先導で、隣の部屋に移動するのでありました。この隣の部屋は十畳程の会議室と云った趣で、部屋の真ん中に正方形のスチール製の大テーブルがあって、各辺にパイプ椅子が二却ずつ並んでいるのでありました。窓はなく、奥の壁には黒板が据えつけられていて、その上には天井ギリギリに大きくて丸い時計がかけてあるのでありました。後は部屋の中には出入口のドア横にインターフォンがあるくらいで、他には装飾的な備品は一切見当たらないのでありました。拙生は何となく大学時代のゼミ室を思い浮かべるのでありました。
 大岩会長に促されて拙生は奥の、黒板を背にした席に座るのでありました。拙生の横には補佐官筆頭が座を取り、その右横の辺には逸茂厳記氏と発羅津玄喜氏が並んで座って、そのまた右横辺のドア前の、拙生と向かいあう席に大岩会長が着くのでありました。
 我々が席に着くと然程間を置かずにドアがノックされて、新顔の三鬼が入室してくるのでありました。この三鬼が誰なのか、前の審理室での話しを思い出しながら、拙生は大凡の見当をつけるのでありました。大岩会長より年長で、閻魔大王官と同じくらいの年恰好の、痩せた体躯をシックなスーツで包んだ、頬骨のやけに張った、しかしどこか品のある顔立ちの老鬼が、恐らく随分昔に閻魔庁の補佐官をしていて、不祥事から地獄省を出奔したと云う、前に補佐官筆頭にちょっかいを出して面白がった大酒呑太郎氏でありましょう。
(続)
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