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もうじやのたわむれ 282 [もうじやのたわむれ 10 創作]

 閻魔大王官は袖の中に入れていた手を出して文机の上に載せるのでありました。「そうするとその石ころや砂粒の中に、念、と云う名前で呼ばれる放射性物質が次第に生成されてくるのじゃよ。見た目は何の変哲もない石ころや砂粒であってもじゃな、その放射性物質を測定出来る機器を使えば、単なる路傍の石ころや砂粒か、それとも、深い反省と後悔の心根の芽生えた亡者の現し身たる石ころや砂粒かが、ちゃんと判別出来ると云うわけじゃ」
「ふうん。或る意味、幽玄な現象だと云えなくもないですかねえ」
 拙生は真顔をして腕組みするのでありました。
「閻魔庁には隠密裏に準娑婆省まで行って、その放射性物質測定機器を駆使して、嘗ては不貞の亡者であったけれども、一定レベル以上の念の測定数値を示すようになった石ころや砂粒は、漏れなく回収してくると云う仕事をする部局があってのう」
「閻魔庁の仕事も、本当に色々多岐に渡るのですねえ」
 拙生は腕組みした儘感心するのでありました。
「そいで以ってそう云う亡者に対しては遅ればせながらも、ちゃんと生まれ変われるように救済措置を施すのじゃよ。況や、自分の意志でも責任でもなく、拉致とかのやむを得ない事由に因って生まれ変わりが出来なかった不幸な亡者で、慎に不本意ながらも準娑婆省で不貞の亡者と同じように、石ころや砂粒になって仕舞うた亡者は云うまでもないわいの」
「娑婆の、仏教で云う阿弥陀様の衆生救済みたいな感じですかね?」
「ま、阿弥陀様と云うと、何やら極楽省の絶対支配者の名前みたいじゃがのう」
 閻魔大王官はそう云って載せていた手で文机を軽く打つのでありました。
「それから、我々亡者は審理後か、或いは一週間の仮の姿の耐用時間後には、魂魄、と云う気体になると仰いましたが、気体となって生まれ変わりまで待機するのですか?」
「そうじゃ。生まれ変わり準備室でのう」
「すぐに順番がきて生まれ変われるのでしょうか?」
「いや、すぐにと云う事はないのう。暫くは魂魄の儘部屋に留まる事になろうのう」
「気体となって仕舞ったら、手足も鼻も耳も口もないでしょうから、飯も食えないし寄席にも街に散歩にも行けないのでしょうね。すると魂魄の期間中は手持無沙汰でしょうね?」
「いやいや退屈とかはせんじゃろうのう。なにせ魂魄となった後は、意識が朦朧として仕舞うのでのう。つまり浅く眠った状態と考えれば良いかのう」
「ああそうですか。それで正気づいたら生まれ変わっていたと云う按配で?」
「ま、煎じつめて云えばそうじゃ。朦朧としている間に閻魔庁の記憶も消去されるのじゃ」
 閻魔大王官は文机に上に置いていた手をまた袖の中に仕舞うのでありました。
「ちょっと具体的な生まれ変わりの経緯と云うのか、生まれ変わりのメカニズムの事をお聞きしても構わないでしょうか?」
「なんじゃい?」
 閻魔大王官は拙生の方に少し身を乗り出すのでありました。
「魂魄となって浅く眠った状態の我々亡者は、どうやって生まれ変わる生身の霊になるのでしょうかね? 魂魄が飛んで行って、生まれたての赤ちゃんに乗り移るのでしょうか?」
(続)
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