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もうじやのたわむれ 279 [もうじやのたわむれ 10 創作]

「ま、改めて経過をなぞれば、その通りじゃわいの」
 閻魔大王官は拙生の言葉に生真面目な表情で頷くのでありました。
「それから思い悩みの三日間、まあ私の場合は呑気な、散歩と観光と寄席見物の三日間を経て、その後にこうして二回目の審理となって、それで生まれ変わり地が決定して、その後は目出度くこちらの世の霊に生まれ変わると云うのですが、・・・そうするとこの亡者の仮の姿の耐用時間と云うのは、ほぼ四日間と云う勘定になると考えて良いのでしょうかね?」
「ああ、仮の姿の耐用時間と云うごくあっさりとした質問かいの。いやな、お手前が態々改めて丁寧に経過をなぞるものじゃから、もっと別の深刻で切迫した質問かと思うたわい」
 閻魔大王官は拍子抜けしたような顔になるのでありました。
「ああいや、単に耐用時間を知りたかっただけです。云い様がまわりくどかったですかな」
 拙生は頭を掻きながら恐縮のお辞儀をするのでありました。
「別にそんなに気後れする事はないわいの。亡者殿の仮の姿の耐用時間はほぼ一週間と云ったところかいのう。審理がきっちり四日間で片づかん場合も稀にあるでのう。その辺を考慮して、少し長めになっておるのじゃよ。ま、これも亡者殿で個体差は多少あるがのう」
「成程、そうですか。ところで今、その辺の余裕を考慮して、なんと仰いましたが、それはいったい誰が、考慮、するのでしょうか?」
「誰が、と云われても困るが、・・・」
 閻魔大王官は髭に覆われた口を少し尖らすのでありました。
「亡者の仮の姿の耐用時間を、ほぼ一週間と決めた方がいらっしゃるわけでしょうかね?」
「いや別に、誰と云って居らんわいの。勿論閻魔庁で決められる事でもないしのう」
「こう云う質問をするのはですね、つまり我々亡者の仮の姿の耐用時間をほぼ一週間にしようとかですね、いやそう云った小さな事だけではなくて、もっと大きな、こちらの世をこう云う風に在らしめている、霊でもない鬼でもない、もっと大きな絶対存在の意志みたいなものがひょっとしたらあるのか、と云う点をお訊きしたかったのです。まあ娑婆の議論風に云うと、神様みたいな存在がいるのかいないのか、という事になると思うのですが」
「いやあ、それはそう云う存在を説く一部の宗教なんかもこちらにもあるのじゃが、それが全てこちらの世的に是認されておる説とは、全くのところなってはおらんわいのう。寧ろ妥当で自然な進化、と云う文脈で語られる説の方が大方の納得を得ておるかうのう」
「この亡者の仮の姿の耐用時間にしても、長い進化の歴史の中でそう云う風に自ずと定まった、と云う事になるのでしょうかね?」
「そうじゃな」
「観念論の入る余地はないと?」
「いや、全くないと云うと語弊があるわいの。何をどう考えようと、またどう発言しようと、公共の利益に反しない限りに於いて地獄省では基本的に自由なのじゃから、観念論でも唯物論でも進化論でも、エプロンでもアイロンでも、バイロンでもロートレアモンでも、ナイロンでもビニロンでも、オーデコロンでもエステティックサロンでも、デカメロンでも夕張メロンでも、兎に角何でも、如何なる事も考えたり発言したりして構わんからのう」
(続)
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