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もうじやのたわむれ 265 [もうじやのたわむれ 9 創作]

「それはそうですが、この思い悩み期間中に亡者様のお買い求めになったお土産品なんかは、亡者様がこちらの世に霊として生まれ変わられたら後日、何時とは限定出来ないですが、何らかの形で、確実にお手元に届く仕組みになっております」
「ほう、そうなんですか?」
「ええ。例えば霊として生まれ変わりになられた後に、その霊様が何処かへ旅行されたりすると、そこのお土産屋とかにそれがちゃんと並べられていて、ふと、思わず知らず霊様はそれを手に取られて、結局お買い求めになったりするようになっているわけです。また、そう云う場合もあれば或いは、誰か友達とか家の者とか近所の霊から何気なく貰ったりした物が、実は亡者様がこの三日の間にお買いになった品物であったりとかするのです。まあ時期と、どう云う形でかは今は何とも云えませんが、しかし間違いなくお手元に届く筈になっておるのですよ。ですからこの三日間に亡者様がお買いになった品物があれば、それを閻魔大王官の後ろに控えている、物的因縁担当の補佐官に提示して頂く事となります」
 コンシェルジュはそう云って何度か頷いて見せるのでありました。
「ふうん。アフターサービスも万全と云った風ですかなあ」
「まあ、この三日間でお土産を街でご購入になったとしても、どうせサインだけでお求めになられたわけですから、霊となった後にその品物に若し代価を支払われた場合でも、決して損はなさっていない事になります。二重払いと云うのではありませんから」
「それはそうですけど、亡者がサインで購入した場合、それを売った店のオヤジが後日閻魔庁に代金を請求するのだと、確か審問官だったか記録官だったか、或いは閻魔大王官だったかに聞いた記憶があるのですが、そうなると例えばその亡者の生まれ変わりである霊が、後にその同じ店でそれをまた購入したりすると、店のオヤジはその代金を閻魔庁と、その生まれ変わりの霊から、二重に受け取る場合もあるわけですよね? 店のオヤジとしたらそれは嬉しいでしょうが、しかし制度としてそれは何となく不備なように思いますが」
「確かにそう云う場合はあります」
 コンシェルジュは少し小難し気な表情をするのでありました。「しかしまあ、その生まれ変わりの霊様は、亡者時代にも元々代金をお払いになってはいないのですから、二重払いした事にはなりませんので、畢竟、霊様の損はないわけです。ま、私共閻魔庁がそれを被れば万事円満に事が成るのであれば、それはそれでいいか、と云うのが閻魔庁の見解です」
「ふうん、そうですかね。ま、私ごときが茶々を入れる話しではないのでしょうが」
 拙生はそう云いながら、昔娑婆の上野鈴本で聴いた志ん朝師匠の『三方一両損』と云う落語を思い出しているのでありました。その『三方一両損』も、厳密に考えれば大岡越前と三両落としたヤツが一両損して、それを拾ったヤツだけが二両儲かったと云う、損得だけで云えば不備と云えば不備な噺ではありますか。まあ、そんな事はどうでも良いですが。
「先程、物的因縁、とか云う言葉が出ましたが、そう云う因縁なんと云うものは、閻魔庁で管轄管理している事象なのでしょうか?」
「そうです。閻魔庁の仕事の中に含まれます」
「閻魔庁の仕事も、あれこれ多岐に渡るのですなあ」
(続)
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