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もうじやのたわむれ 257 [もうじやのたわむれ 9 創作]

 ひょっとしたら拙生はこちらの世で、あのお姉さんに逢えるかもしれません。尤も、娑婆時代のお姉さんへのときめきとか、無念とか申しわけなさとかの濃い感情は蘇らないようでありますから、それは少々味気ない事ではあります。それに外見も娑婆の頃と違っているのでありましょうから、あのお姉さんと気づく事もなく、またこちらの世でも隣同士の家に住んでいるのかも知れません。ま、そんな偶然もない事もないようでありますから。
 今日カラオケボックスで一緒になった楚々野淑美さんは、今現在思いを寄せている鬼がいるらしいのですが、彼女がその彼氏と結婚でもして子供が生まれるとしたら、拙生がその赤ちゃんに生まれ変わると云うのも、これは何となく悪くはないように思うのであります。まあ、どう悪くはないのかは、俄かには上手く説明出来ないのでありますが。
 悪くない事の一つは、あんなに綺麗な淑美さんの子として生まれ変わるとするなら、拙生もこちらの世では結構な美男子に生まれ変われるであろう事であります。そうなれば大いにモテモテの男として、娑婆時代とは違った生を生きる事が出来るでありましょうし、こちらの世での拙生の人生、いや霊生も、屹度バラ色でありましょうなあ。
 しかし鬼同士の男女からは鬼が生まれると云う事でありますから、霊に生まれ変わる筈の拙生にはその実現性なんと云うのは、さっぱり芽すらもないと云う事になりますか。残念な事であります。拙生は少し顰め面をしてまた日本酒を一口飲むのでありました。
 それにつけても、出来るなら我がバラ色の霊生のために、美男美女のカップルの間に生まれ変わりたいものであります。しかもあんまり躾とかに厳しくなくて、勉強しろと煩くもない、全くの放任主義の両親の子供として生まれ変わりたいものであります。
 ま、新たに生まれ変わった個体の運動能力は、人に倍してあった方が良いですかな。それに身長も高いに越した事はありません。体重は身長につりあった理想的なバランスで。ギターを上手く弾ける器用さも欲しいところであります。それから機知に富んだ会話能力なんというのも、モテモテの霊生を生きるためにはあった方が良いでありましょうかな。
 しかし運動能力とか器用さとか会話能力なんと云うものは、生まれつきと云うよりは生まれた後に、相応の努力をして一定程度度身につけるべき能力でありますか。こちらの世にあっても、怠け者ではダメなのでありましょうなあ。後は、モテモテの霊生には関係ありませんが、長じてから豆アレルギーが出ない体であって欲しいものであります。
 いやところで拙生はこちらの世でも、また男の霊に生まれ変わるのでありましょうか。娑婆で男だったからと云って、こちらの世でもそれが連続するとは限らないのではないでしょうか。娑婆のあらゆるものが御破算になるのなら、性別もクリアになると考えるべきでありありましょう。ま、態々ベッドから起き出して、メモ帳に新たに書き足すのは億劫だからやりませんが、この疑問もまた明日の審理で閻魔大王官に訊く事といたしましょう。
 いやいや、こんな事をウダウダ考えながら眠りに着くのではなくて、楚々野淑美さんの美しい面影を、頭蓋の内側に投影しながら就眠する筈でありました。拙生は仕切り直しのつもりで、碗を傾けて残っていた日本酒を干すと、またなみなみと注ぎ入れて、それを一口飲み下すのでありました。するとどうしたものか、楚々野淑美さんの面影を手でグイと脇に押し遣って、選りに選って娑婆に未だ居るカカアが登場してくるのでありました。
(続)
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