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もうじやのたわむれ 239 [もうじやのたわむれ 8 創作]

 歌い終えた逸茂厳記氏に、横に座っている志柔エミさんが一際大きな拍手を送るのでありました。逸茂厳記氏は横目でちらと志柔エミさんの方を窺って、この予想外の喝采にたじろぎながら照れ臭そうに笑むのでありました。
「男っぽい歌ですね」
 エミさんが逸茂厳記氏に云うのでありました。
「ま、そうですね」
 逸茂厳記氏は頭を掻きながらマイクをテーブルの上に置くのでありました。
「そういう感じの歌が好きなんですか?」
「いや、特段そう云うわけではないけど、他に知っている歌がないものですから」
「大学では体育会の日本拳法部にいらしたんでしょう?」
「ええ。そこに座っている発羅津の二年上級生になります」
 逸茂厳記氏は発羅津玄喜氏を指差すのでありました。
「逸茂先輩は一年生の頃から大学選手権では何時もベストフォーに入っていたんだぜ」
 発羅津玄喜氏がエミさんに逸茂厳記氏のキャリアを紹介するのでありました。
「ま、結局卒業までに優勝は一度もしなかったけどな」
 逸茂厳記氏が謙遜するのでありました。
「でも、すごいじゃないですか、ベストフォーなんて」
 エミさんが熱い尊敬の眼差しを逸茂厳記氏に送るのでありました。
「エミは昔から、女の鬼の前では無愛想で、しかも実は腕っ節の強い男が好きなのよね」
 藍教亜留代さんがそう云うと、エミさんは恥ずかしそうに目を伏せるのでありました。
「おお、逸茂先輩がどんぴしゃじゃんか、そう云う事なら」
 発羅津玄喜氏が頓狂な声で囃し立てるのでありました。その発言に逸茂厳記氏と志柔エミさんは共に下を向いて、頬を赤く染めて大いに照れるのでありましたが、何となくこの二人、いや二鬼、良い感じになっているのではありませんかな。
「逸茂さんはどう云った女性が好みですかな?」
 拙生が言葉を挟むのでありました。
「いや私は、特段これと云った女性の好みはありませんが、・・・」
「先輩は前からずっと、可憐で、仕草にどことなく愛嬌のあるなタイプが好みですよね」
 発羅津玄喜氏が代わりに応えるのでありました。その発羅津玄喜氏の言葉に逸茂厳記氏は苦笑うのでありましたが、敢えて否定もしないのでありました。
「それならこちらも、エミなんかぴったりじゃん」
 亜留代さんがそう云って手を一回叩くのでありました。逸茂厳記氏と志柔エミさんはまたもや照れて同時に下を向くのでありました。
「成程そうやって隣同士で座って照れている様子なんと云うものは、傍から見るとなかなか微笑ましいカップルと云った風情ですよねえ」
 拙生が発羅津氏と藍教女史の仲人了見に不謹慎に乗るのでありました。しかし確かにこの二人、実にお似合いのカップルに見えると云うのは拙生の掛け値なしの感想であります。
(続)
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