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もうじやのたわむれ 236 [もうじやのたわむれ 8 創作]

 この二人は、いや二鬼は、まるでその並んで座っている様子が、ありふれた表現ながら一対のお雛様みたいで、見た感じが結構良いではないかと拙生は思うのでありました。
「逸茂さん、横の女性のグラスが空になっていますよ」
 拙生は逸茂厳記氏にそう指摘してあげるのでありました。逸茂厳記氏とエミさんが一緒に前のグラスに目を落とすのでありました。
「ええと、・・・お代わりをしますか?」
 逸茂厳記氏が義務感と気後れから、何やら小難しい顔をして訊ねるのでありました。
「今度はワインを貰おうかしら、赤の」
 エミさんがそう云うと逸茂厳記氏が発羅津玄喜氏の顔を見るのでありました。
「はいはい、赤ワインね」
 発羅津玄喜氏は頷くとすぐさまインターフォンの方に行って受話器を取って、幹事役をきびきびとこなすのでありました。
「貴方もグラスが空いていますが、同じレモンハイをもう一杯注文します?」
 拙生は拙生の左横のスカートの女性に話しかけるのでありました。
「ああ、お気遣い有難うございます」
 スカートの女性は楚々とした一礼を拙生に返すのでありました。「でも今度はあたしも日本酒にしようかしら。おじ様が飲んでいるのを見ていたら、何か欲しくなっちゃったし」
「はいよ。日本酒も追加ね」
 発羅津玄喜氏はそう云って、受話器に向かって赤ワインと日本酒の二合徳利二本と猪口をもう一つと、それから氏の彼女のためにカシスソーダ、序でにウーロン茶を二杯注文するのでありました。氏の彼女に何を飲むか確認しないのは、彼女のこう云う場所で飲む好きな酒がカシスソーダである事を、もうすっかり心得ているからなのでありましょう。
「貴方のお名前は何と仰るのですか?」
 拙生はスカートの女性に訊くのでありました。
「楚々野淑美と申します」
「おお、これも貴方の雰囲気にピッタリの清楚なお名前ですね」
「いえそんな。恐れ入ります」
 女性は拙生の方に向けた目をやや細めて、笑いながら軽く頭を下げるのでありました。そんな仕草が結構色っぽくて、全く以って拙生の好みのタイプであります。こう云う魅力的な女性と、娑婆にいる時に出逢いたかったと拙生は秘かに悔しがるのでありました。
「序でにお伺いしますが貴方のお名前は?」
 拙生は発羅津玄喜氏の彼女に訊ねるのでありました。
「あら、私の名前は序でに訊くんだ」
 発羅津玄喜氏の彼女が頬を膨らませて不満の表情を拙生に送るのでありました。
「失礼しました。そうではないのですが、言葉の拍子で竟、序で、なんと口走ったのです」
 拙生はお辞儀して見せるのでありました。
「ま、いいや。どうせあたしはもう買い手がついているって思ったんでしょうからね」
(続)
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