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もうじやのたわむれ 234 [もうじやのたわむれ 8 創作]

 探してみると、おお、幸運にもちゃんとあるではありませんか。
「一八一八の九〇四番をお願いします」
 拙生がそう云うと発羅津玄喜氏が慣れた手つきでリモコンを操作するのでありました。
「なあに『ホンダラ行進曲』って?」
 正面の大きなテレビ画面に出てきた曲のタイトルを見ながら、発羅津玄喜氏の彼女が拙生に訊くのでありました。
「娑婆で私が偶に歌っていた曲です」
「作詞の青島幸男って?」
「この間まで娑婆にいたコント作家の方で、娑婆では参議院議員やら、日本国の首都である東京の都知事もやった事のある方です。歌っているのはクレージー・キャッツと云う、コントもやれば歌も歌うし映画やテレビにも出ると云う有名なコミックバンドです」
「ネコ好きな人達の集まったバンド?」
「いやいや、別にそう云うのではありませんが」
「その青島幸男とかクレージー・キャッツとか、玄ちゃん知ってる?」
 発羅津玄喜氏の彼女が発羅津玄喜氏に顔を向けるのでありました。
「聞いた事があるような気がするけど、よくは知らないなあそんな名前のバンド」
 発羅津玄喜氏が首を傾げながら返答するのでありました。どうやらクレージー・キャッツは、ひょっとしたらこちらでももう結成されているのかも知れませんが、しかし未だ有名ではないようであります。まあ、ハナ肇さんやら植木等さん、それに谷啓さん等のメンバーの方々がこちらにいらしてから、そんなに時間が経っていないのでありましたから、娑婆のような誰もが知っている大変な人気者と云うわけではないのでありましょうか。
 しかし、例えば谷啓さんが向うの世を引き払われたのは、竟最近の筈でありますし、そうなるとこちらでは未だ全くの少年と云う歳頃であります。クレージー・キャッツのメンバーになるには、到底早すぎると云うものでありましょう。他の方々にしてもジャズをやるにも、大人の笑えるコントをやるにしても、普通に考えれば無理な年齢でありましょう。となると、こちらにいるかも知れないクレージー・キャッツと云う名前のバンドは、娑婆のクレージー・キャッツのメンバーではない、全く他の連中が作ったバンドなのでありましょうか。青島幸男さんにしても、こんな歌を創るには未だ早すぎる年齢でありましょうし。
 クレージー・キャッツのメンバーや青島幸男氏が未だこちらに来ていないのを幸いに、全く違う横着な霊が娑婆を真似てクレージー・キャッツや青島幸男を名乗って、先に人気者になろうと企てたのかも知れません。しかしこれは剽窃と云うのでも、娑婆にいるバンドや人物になりすまそうとする胡散臭い仕業、と云うのでも多分ないのでありましょう。
 何故なら娑婆の記憶は、存念等の消去された淡いものでありますし、娑婆での人間関係とかも御破算になるのでありますから、向うとこちらの歴史的連続性は設定し得ないわけであります。そうであるからには、前にも云ったように著作権も版権も存在しようがありませんし、こちらに生まれ変わった霊が娑婆での事跡を盾に、剽窃であると非を鳴らす心性もないわけであります。敢えて云えば全くクールに早い者勝ちと云う按配であります。
(続)
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