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もうじやのたわむれ 232 [もうじやのたわむれ 8 創作]

「そうです。閻魔庁付帯の警護学校ではそれは受講必須科目となっております」
「ふうん、そうですか」
 拙生は顎を撫でながら、どう云う表情を返したら良いのか咄嗟に判らないものだから、無表情の儘で頷くのでありました。まあ兎に角、我々は車に乗りこんで、これも日比谷公園からそんなに遠くない、発羅津玄喜氏の馴染みのカラオケ店へと向かうのでありました。
 発羅津玄喜氏に案内されたカラオケ店は、雑居ビルの一階から三階までを占有する、娑婆の盛り場なんかによくあるタイプの店と同じで、受付の様子も個室の並ぶ店内の内装なんかも、向うの世のものとさして違わないのでありました。受付を済ませてから我々は個室に入って、拙生は日本酒を、それに両鬼はウーロン茶を内線電話で注文して、皮切りにと発羅津玄喜氏が一曲、成程の美声でこちらで今流行っていると云う歌謡曲を歌い終えた頃、徐に部屋のドアが開いて若い女性が三鬼「お待たせ~」なんと云いながら入って来るのでありました。女性の出現で、部屋の中が急に華やいだ雰囲気になるのでありました。
「おう、意外に早かったなあ」
 発羅津玄喜氏がマイクを持った手を上に上げて大袈裟な仕草で、その三鬼の中の一鬼に挨拶するのでありました。女性の方も目を見開いてこれも愛嬌たっぷりの喜びの表情を作って、両掌をひらひらと馴れ々々しい仕草でふり返すのでありました。髪をポニーテールに纏めていて、朱色のジーパンに黄色のTシャツ姿と飾り気のない服装ではありますが、なかなかスタイルの良い、美人の鬼であります。どうやらその女性が発羅津玄喜氏の彼女なのでありましょう。他の二鬼もカジュアルな服装の、なかなか魅力的な女性であります。
「何々、未だ仕事中なの?」
 発羅津玄喜氏の隣に座った、氏の彼女と思しき女性が訊くのでありました。
「そう。この亡者様の警護中」
 発羅津玄喜氏が掌を上に向けた手で拙生を指すのでありました。
「ああどうも、はじめまして」
 女性が上体と首をやや横に傾げて前に倒しながら、拙生に挨拶するのでありました。
「これはどうも」
 拙生は上体を真ん前に折ってお辞儀するのでありました。
「何か、素敵なおじ様って感じの方ね」
 女性が発羅津玄喜氏に云うのでありましたが、これは拙生に聞かせるためのべんちゃらでありましょう。そう云われた拙生は、ま、悪い気は全くのところしません。
 馬蹄形の席の端に発羅津玄喜氏が座り、その左横に氏の彼女、その左に逸茂厳記氏、そのまた左横にブルージーンズのショートカットの小柄な女性、そうして拙生、拙生の左には三鬼の中で背の一番高い、セミロングでストレートの髪を肩に垂らした、それに唯一のスカート姿の、三鬼の中では一番大人の雰囲気を漂わせた女性が座るのでありました。
「何飲む?」
 発羅津玄喜氏が三鬼の女性に夫々の飲み物を聴いてから、席を立って出入口脇にある内線電話で注文を入れ、きびきび且つかいがいしく世話を焼くのでありました。
(続)
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