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もうじやのたわむれ 223 [もうじやのたわむれ 8 創作]

「今から向かうと未だ随分早いようですから、出来れば途中の邪馬台郡長官邸とか郡会議事堂近辺を、少し見学してから行きたいと思うのですが」
 拙生はそうリクエストを出すのでありました。
「ああ、それが良いですね。早くから寄席の入場券売り場の前で三人して、いや一亡者と二鬼してぼんやり手持無沙汰に待っているのも、如何にも能がないですしね」
 逸茂厳記氏はそう云って首を拙生の方に捻った儘頷くのでありました。
「一昨日、邪馬台銀座商店街に向かった時、本来はそこも見学する予定でしたが、何故かさっさと通り過ぎて仕舞って、商店街まで直接行ってしまったのです」
「ああ、そうですか。あの辺もブラブラ散歩にはもってこいの処ですよ。街並みも綺麗ですし、警官が一定の時間間隔で警邏していますから比較的安全ですしね。あそこは宿泊施設から近いですから、けっこうポピュラーな観光スポットになっておりますよ」
 と云う事で車は閻魔庁から歩いてもさして遠くない、千代田区永田町とか霞が関と云う町名のついた官庁街に向かうのでありました。
 車を日比谷公園と云う名前のついた、結構広い庭園の中にある駐車場の中に入れて、我々は外に出るのでありました。
「この日比谷公園と云うのはこの辺の役所やオフィスに勤める霊なんかの、昼休みの憩いのスペースとなっております。雨の日や真冬、それに真夏を除いて、ここに自分の家から持ってきた手作り弁当やら、コンビニで買ったパンなんかを持ちこんで、昼食を摂る霊も多いですよ。未だ昼休みに少し早いですから、今は何となく閑散としておりますが」
 一町内分の面積は優にありそうな、手入れの行き届いた広い公園の木々の中を歩きながら、逸茂厳記氏が拙生に云うのでありました。
「公園の中に噴水とか野外音楽堂とか図書館とか、それに公会堂なんかがありますかね?」
 拙生は訊くのでありました。
「あります。良くご存知で」
「それに名前は違うかもしれませんが、松本楼、なんと云うカレーの有名な、相当歴史のあるレストランがありますかね?」
「おお、そんなディテールまでよくご存知ですね」
 逸茂厳記氏が大袈裟に驚くのでありました。
「娑婆の日本の東京にもありますからね、同じ日比谷公園と云う公園が。それも矢張り官庁街オフィス街のど真ん中に。そこにも噴水や野外音楽堂なんかの施設や松本楼と云うレストランがあります。ところでこの公園の北に、皇居、なんと云うスペースはありますか?」
「皇居、ですか?」
 逸茂厳記氏が首を傾げるのでありました。「いや、そう云う処はありませんねえ」
「ああそうですか」
 その辺は娑婆の様子とは違っているようであります。
 我々は公園の中を暫く散策して、それから街中に出るのでありました。行き交う霊の姿もそのやや急ぎ足の歩きぶりも、娑婆の永田町や霞が関辺りと殆ど同じなのでありました。
(続)
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