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もうじやのたわむれ 204 [もうじやのたわむれ 7 創作]

「これからすぐに街の散歩に出られますか?」
 コンシェルジュが訊くのでありました。
「そうですね。朝食も済ませて仕舞いましたし、しこたま食いに食って腹一杯で動くのが億劫になって、満腹の遣る瀬なさを感じている、と云った状態でも全くありませんし、出来ればこれからすぐに散歩に出発したいと思うのですが」
「ああそうですか。判りました」
 コンシェルジュはそう云うと、デスクの傍らに置いてある白い電話機から受話器を取り外すと、プッシュボタンを一つ押すのでありました。恐らく内線電話で、拙生の護衛につくと云う鬼を呼ぼうとしているのでありましょう。
「ああ、コンシェルジュの安奈伊ですが、警護の賀亜土係長に繋いでください」
 これはコンシェルジュが、耳に当てがった受話器に向かって云う言葉でありました。暫く待った後コンシェルジュは送話口に、ああどうも、はい、はあ、いや、そうです、はい、はい、そうです、はい、いや、はい、ではお願いします、はい、なんと云う言葉を吐いた後、徐に受話器を元に戻して拙生の方を見て、この儘少々お待ちください、と愛想笑いながら云うのでありました。拙生は頷いてその指示に従う仕草をして見せるのでありました。
「昨日態々私達を警察署まで迎えに来てくれた賀亜土万三さんという方は、警護の係長をされておられるのですか?」
 拙生が訊くのでありました。
「そうです。なかなか鬼当たりの良い、気さくな方です」
「その、鬼当り、と云うのは娑婆で云うところの、人当たり、と云う事でしょうかね?」
「正解です」
 コンシェルジュがピースサインをするのでありました。
「貴方は、安奈伊さん、と云うお名前で?」
「ええ。申し遅れましたが、安奈伊司太郎と申します」
 コンシェルジュはそう云って一礼するのでありました。
 待つ事暫し、警護の担当と思しき鬼が二鬼やって来て、立った儘で拙生にお辞儀をするのでありました。二鬼とも私服姿で、若い、きびきびとした態度の鬼でありました。
「昨日はどうも、とんだ事でした」
 一鬼が愛嬌のある笑みを浮かべて拙生に云うのでありました。
「ええと、あなたは確か昨日私達を迎えに来てくれた三鬼の中のお一方でしたね?」
「そうです。覚えておいて頂いたようで。昨日係長の賀亜土と一緒にお迎えに参上した、警護係りの逸茂厳記と申します。それからこちらの鬼は発羅津玄喜と申します」
「溌羅津玄喜です」
 もう一鬼が大学の体育会の学生のような、些か硬い礼をしながら云うのでありました。
「お二人共、いやお二鬼共下のお名前が、げんき、さんで?」
「そうです。げんきコンビで今日のお散歩のお伴を、元気にさせて頂きます」
 今度は二鬼揃ってお辞儀をするのでありました。
(続)
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