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もうじやのたわむれ 203 [もうじやのたわむれ 7 創作]

「別の手立て、ですか?」
 拙生はコンシェルジュを少しの戸惑い顔で窺いながら訊くのでありました。
「そうです。昨日の誘拐騒ぎの後ですから、こちらとしても貴方様が本日も散歩に出られるとなると、責任上、万全の安全策を講じておく必要がありますから」
「ああそうですか。それはお手数をおかけしますなあ」
「いえいえ、とんでもない。気になさらずに。一般的なサービスの範囲です」
 コンシェルジュは掌を横にふりながらお辞儀するのでありました。
「護衛か何かがつくのでしょうか?」
「はい。施設局警護係官が二鬼同行させていただきます」
「娑婆で云うSPみたいな方ですかな?」
「娑婆のSPは警察官ですが、同行させていただくのは閻魔庁の職員です」
「ああそうですか」
「しかし閻魔庁職員と云っても、警護のスペシャリストでありますから、SP並に頼りになります。彼等は逮捕権はありませんし、警官のように拳銃は所持しませんが、伸び縮み警棒とかスタンガンとか、一定の制圧武器は携帯しております。それに色々な武道の習熟者でもあります。柔道、剣道、合気道、空手、薙刀、それに水泳術も槍も弓も馬も、・・・」
「・・・未も申も酉も戌も、でしょうかな?」
 拙生は先回りして云うのでありました。
「おっと、その冗談をどうしてご存知で?」
「昨日警察署に迎えに来てくれた、賀亜土万三さんと云う名前の方から聞きました」
「ああそうですか。それは何とも。・・・」
 コンシェルジュはそのフレーズを拙生が既知であった事に対して、悔しそうな、残念そうな表情を隠さないのでありました。
「要するに、頼もしい護衛がつくわけですね、私の散歩に」
「そうです。しかしだからと云って貴方様の行動が何ら制約を受ける事はありません。貴方様は同行の警護員に全く気を遣わずに、何の遠慮もなく自分のペースで散歩していただけます。警護員はそれに一言の文句も云わず、ひたぶるに愛想良く、影のようにただ同行いたします。でももしご所望があれば、貴方様の散歩に有益な情報等をご提供する事は出来ます。云ってみれば、水戸黄門に同行する助さん格さんみたいな感じでありましょうか」
「家来みたいな感じですか?」
「まあ、家来と云うのは語弊がありますが、大いに謙った介助役、とでも申しましょうか」
「助さん格さんという感じではないのですな、そうすると」
「そうですね。私の先の譬えは訂正させて頂きます。調子に乗って余計な事を云わずに、単に、貴方様に何のご負担もおかけしない護衛がつくとだけ云えば足りましたかな」
 コンシェルジュはあっさりそう云って一礼するのでありました。
「いやこちらの方こそ、助さん格さんに余計に拘ったりしなければ良かったのですが」
 拙生はコンシェルジュの恐縮の体に恐縮するのでありました。
(続)
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