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もうじやのたわむれ 182 [もうじやのたわむれ 7 創作]

 賀亜土万三氏が愛想笑いながら云うのでありました。
「ではどうそ、お乗りください」
 賀亜土万三氏は掌を上に向けた手で車の中を指し示すのでありました。
 若い一人の、いや一鬼の警護員が運転席に、賀亜土万三氏が助手席に、我々がその後ろのシートに、それもう一鬼の警護員が我々の後ろのシートに着席すると、車はそろそろと動き出すのでありました。警察署の駐車場を出ると、車はすぐに棕櫚の並木の郡道一号線に出るのでありました。夜更けていて、道にはあまり車の姿はないのでありました。
「すぐに宿泊施設に着きますから」
 賀亜土間万三氏が首を後ろに回して云うのでありました。
 ほんの十分程で我々を載せた大型のバンは、閻魔庁の門の中に入って行くのでありました。鵜方氏の警戒が全くの徒労で終わった事に、拙生は安堵のため息を秘かに漏らすのでありました。実際、警護員達は間違いなく閻魔庁の者達、いや鬼達であると自信ありげに見立てたものの、内心この拙生の勘に多少の危惧は持っていたのでありましたから。
 車が停止すると賀亜土万三氏が素早く助手席から降りて、律義に敬礼しながら、拙生と鵜方氏のために態々後ろのドアを開けてくれるのでありました。
「恐れ入ります」
 拙生と鵜方氏は夫々そう云って、手刀を切りつつ車から降りるのでありました。
 人気、いや霊気もないのに二階へ上がるエスカレーターは動いているのでありました。聞けば終夜動いているのだそうであります。拙生と鵜方氏は警護員に囲まれて、宿泊施設の出入口へと、既に総ての店のシャッターが下りた商業フロアーを歩くのでありました。
 宿泊施設の出入口には、出た時と同じに警備員が二鬼立っているのでありました。警護員三鬼の先導があるものだから、我々は両脇からの敬礼に送られて、すんなり中へ入る事が出来るのでありました。本来ならここで、名前とか中に入る目的やらを申告して、所持品の検査も受けて、入館名簿に氏名を自著しなければ入れないのだそうであります。
 中に入っても我々は金属探知機の中を潜る事もなく、国際空港の入国審査のようなところを通過する必要もなく、あっさりと上階に上るエレベーターの前まで辿り着くのでありました。警護員がつき添ってくれていると、総てフリーパスのようであります。
 エレベーターで宿泊施設のエントランスホールに上がって、フロントの前まで賀亜土万三氏と他二鬼の警護員はつき添ってくれるのでありました。
「ではここで我々は失礼いたします」
 フロントの前で、賀亜土万三氏が敬礼しながら拙生と鵜方氏に云うのでありました。やや遅れて他の二鬼もきびきびとした動作で敬礼するのでありました。
「どうも面倒をおかけいたしました」
 鵜方氏がお辞儀をするのでありました。拙生も少し遅れて礼をするのでありました。我々が頭を上げると賀亜土万三氏と他の鬼の警護員は回れ右をして、エレベーターホールの方に去って行くのでありました。警護員の姿が見えなくなると、拙生と鵜方氏は顔を見あわせて、どちらからともなく散歩からの無事の帰還に安堵の笑みを漏らすのでありました。
(続)
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