So-net無料ブログ作成

もうじやのたわむれ 175 [もうじやのたわむれ 6 創作]

「あの暴漢達はどう云う素姓の連中なんでしょうかね?」
 鵜方氏が刑事に訊くのでありました。
「まあ、貴方達が認識出来て貴方達の体に接触出来るヤツ等ですから、こちらの一般の霊ではないでしょうね。鬼類か、さもなくば貴方達と同じ亡者と云う事になるでしょう」
「ああそうか。我々亡者は一般の霊にとっては、幽霊みたいな質量のない存在と云う事ですからね。幽霊と格闘する事は出来ませんものね」
「そう云う事です」
 刑事はそう云って、手にしているボールペンを指先でくるんと回すのでありました。その手つきは、審問室での審問官の仕草を思い起こさせるのでありました。刑事のボールペン回しの手際は、審問官程習熟している風ではないけれど、記録官よりは上手そうであります。このボールペンでの手遊びが今、こちらで流行っているのでありましょうか。
「そうすると、以前に閻魔庁に勤めていたヤツと云う事になりますかな?」
「いや、あっさりとは口を割らないでしょうが、恐らく準娑婆省から来た連中でしょう」
「向こうの諜報機関に属すると云う?」
「そうですね。どこかで聞き及ばれていますかな、その辺の事情を?」
「ええ。宿泊施設のコンシェルジュにちらと聞きました。我々亡者を誘拐して、準娑婆省に拉致して、そこの住民にしてしまおうと云う魂胆で活動している諜報員がいると」
「まあ、しっかり取り調べてみないと判りませんが、恐らくそうでしょう」
 刑事はそう云ってまたボールペンをくるんと回すのでありました。「今まで尻尾も掴めなかった準娑婆省の諜報機関のヤツ等らしいのを、こうして三鬼も身柄拘束出来たのですから、これを切かけに準娑婆省の企みとか、諜報組織の全容や協力者の情報なんかも明らかに出来るかも知れません。そう云う意味で貴方達を連中が今日襲ったと云うのは、我々警察にすれは実に好都合であったと云えるでしょうかな。ま、申しわけない云い方ですがね」
 刑事はくるんくるんとボールペンを二度続けて回して見せるのでありました、
「その辺が解明されて、準娑婆省の関与が証拠づけられれば、地獄省としては準娑婆省当局に対して、どのような対処がなされるのでしょうかね?」
 これは拙生が訊くのでありました。
「それは我々が迂闊にここで云うべき事柄ではありませんが、しかしまあ、断固として有耶無耶にはしない、遠慮のない措置が決定されるでしょうね、地獄省政府では」
「下手をすると準娑婆省との戦争、なんと云う事態も想定されるのでしょうかね?」
「いやあ、その辺の政治的な判断については、私のような一介の警察官なんぞには何とも云い様がありません。しかし、そこまで事態を拗らせる事はないのじゃないでしょうかね、穏健な民主省家である我が地獄省の今までの前例からしても。ま、極楽省の方とも連携して、全こちらの世的な大問題にはするでしょうが、戦争と云うところまではいかないでしょう。準娑婆省と戦争をしても、こちらにとって特段の利益は何もないでしょうからね」
「ああそうですか」
 拙生は頷いて、刑事がまたボールペンを回すだろうとその手元を見るのでありました。
(続)
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0