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もうじやのたわむれ 173 [もうじやのたわむれ 6 創作]

「大丈夫ですか?」
 警察官が拙生と鵜方氏が平静な表情をしているのを認めて、少し気勢を削がれたような顔になって、遠慮がちな小声で聞くのでありました。
「ええ、私等は大丈夫ですが、・・・」
 鵜方氏はそう応えて、その後に公園前の路上に転がっている巨漢三人、いや三霊、若しくは三鬼の方に視線を向けるのでありました。
「こいつ等が先程電話で仰った、暴漢共ですか?」
 警察官もそちらを見るのでありました。
「そうです。一人捕り逃がしましたが」
 そう云った後で鵜方氏が自分の頭を一つ叩くのでありました。「いや、一人じゃなくて、一霊とか一鬼とか云わなければいけないのでしょうかね、こちらでは」
「この際、そう云う助数詞はどうでも良いですが、・・・」
 警察官は鵜方氏の顔をまじまじと見るのでありました。「貴方がこの、ここに倒れている男達をやっつけて仕舞われたので?」
「ええ、まあ。先にかかってきたのはこいつ等の方ですから、あくまで正当防衛ですよ」
 鵜方氏がそう受け答えしている途中で、またもやサイレンの音と、闇にグルグル回る赤燈の光の飛沫が見えるのでありました。
「亡者の方を認識出来る応援の警官を本署から呼んだのです」
 件の警官が云うのでありました。
 到着した三台のパトカーの中から制服警官が六人、いや六霊、若しくは六鬼と、私服刑事が三人、いや三霊、若しくは三鬼跳び出してくるのでありました。警官達が倒れている男達を急いで取り巻くと、拍子の良い事に男達がぼつぼつと意識を取り戻し始めるのでありました。暴漢達の中で一端意識を取り戻して、最初に鵜方氏に当身を食わされた男が、呻き声を発しながら緩慢な動作で上体を起こそうとしているのでありました。
 男達は両脇から警官に腕を取られてパトカーまで引き立てられて、すぐに手錠を嵌められるのでありました。いきなり有無を云わさず手錠を嵌めると云うのも、民主警察としては何やら乱暴過ぎるように拙生には思えるのでありましたが、しかしまあ、襲われた当事者たる拙生の、暴漢達へのそんな呑気で間抜けた同情みたいなものは、今のこの場合、見当外れでぼんくらな、戯れ言のような同情と云う以外にはないものでありましょうが。
「こいつ等の面相は間違いなく、指名手配されている誘拐犯のものだ」
 レインコートを着た刑事が、最初にここに到着した交番の警官に云うのでありました。
「ああ、矢張りそうですか」
 交番の警官が緊張した面持ちで返すのでありました。
「襲われたのは貴方達ですね?」
 刑事は、今度は警官の横に立っている拙生と鵜方氏に、鋭い視線を投げながらも柔らかい物腰で云うのでありました。拙生と鵜方氏は夫々頷くのでありました。
「一応事情をお聞きしますので、本署までご同行願います」
(続)
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