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もうじやのたわむれ 171 [もうじやのたわむれ 6 創作]

 鵜方氏が拙生を男達から遠ざかる方向に、手でやんわりと押し遣るのでありました。離れていろと云う無言の指示でありましょうから、拙生は慌てて公園とは反対の方に後ろ向きにさがって、一団とやや距離を取るのでありました。男達が拙生を見るのでありましたが、鵜方氏が前に立ちはだかっているので動けないのでありました。
 男達の視線が鵜方氏から離れたのは、つまり一瞬の隙が出来たと云う事で、鵜方氏はその隙につけこんで端にいた男の懐に素早く入ると、その袖口を取って男の体を前方に引き出し、同時に手刀を首に打ちこみながら急激に体を沈めるのでありました。男は前回りに翻筋斗打って頭から地面に叩きつけられて、其の儘仰向けにのびてしまうのでありました。すかさず鵜方氏がその横の男の足を、沈めた儘の体で強烈に薙ぎ払うと、男は鵜方氏の上を宙で綺麗に一回転して、背中から地面に落ちるのでありました。落ちた男の鳩尾にすぐに鵜方氏が拳で当身を入れると、男はグウと呻いて気絶するのでありました。あっという間に、鵜方氏は巨漢三人、いや三霊、若しくは三鬼を片づけて仕舞ったのでありました。
 拙生はこの鵜方氏の圧倒的な強さにすっかり感服するのでありました。そう云えば氏は娑婆で合気道の修行を長く続けていたと云う事でありましたが、まるでテレビの刑事ドラマか捕り物の時代劇のように、巨漢三人、いや三霊、若しくは三鬼を瞬く間に鮮やかに倒して仕舞う手並みなんと云うものは、実に全く驚嘆に値すべきものでありましょう。拙生は思わず不謹慎にも、音羽屋! なんと声をかけたくなるのでありました。
 残った小柄の男が慌てて鵜方氏から距離をとり、懐に片手を入れるのでありました。その手が再び現れた時には、街灯の明かりにキラと光る短刀が握られているのでありました。
 鵜方氏は小柄な男と間合いをとって対峙すると、やや前屈に身構えて、上着を素早く脱いでそれを右の手に巻きつけるのでありました。
「こいつ等同様、お前も痛い目に遭いたいんだな?」
 鵜方氏がそう無表情の儘クールに云って、小柄な男を怯ませようとするのでありました。男は片手の短刀を前に構えた儘、鵜方氏を見据えて何も云わないのでありました。少し長い時間、その儘で動かない対峙状況が続くのでありましたが、しかし時折、男が拙生の方にチラチラと視線を投げるのは判るのでありました。暫くすると男は、距離はつめないながら、鵜方氏の周りを左にゆっくりと回るような動きを見せるのでありました。
 それは、男と拙生を結ぶ直線の間に鵜方氏がいると云う位置関係を崩して、男と鵜方氏、それに拙生を頂点とする、三角形の位置関係をとろうとしているように窺えるのでありました。と云う事はつまり、男は期を見て手練の鵜方氏ではなく、拙生の方に跳びかかろうと目論んでいると云う事であります。そう気づいた拙生はたじろいで、男と鵜方氏と拙生の位置関係が直線の儘になる方向に、男が動いた分を慌てて移動するのでありました。鵜方氏も男の目論見を見破っているらしく、拙生と男の間に自分の身が挟まり続けるように動くのでありました。我々は夫々、円を描くような軌跡で横移動を続けるのでありました。
 暫くすると男は距離を取った儘、動くのを止めるのでありました。これでは目論見が上手くいかないと踏んだのでありましょう。男は舌打ちをして、屈めていた上体を起こして、短刀を持った手の構えを解くのでありました。
(続)
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