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もうじやのたわむれ 151 [もうじやのたわむれ 6 創作]

「はい。一向に構いません」
 拙生は頷くのでありました。
「ここが閻魔庁になります」
 コンシェルジュは閻魔庁と書いてある建物の形状を丸で囲むのでありました。「建物は大きな道路に面しておりまして、この道路が邪馬台郡を東西に切り裂くように走る郡道一号線です。ここを西の方に十分程歩くと、郡会議事堂があります」
 コンシェルジュは拙生側の目線で見れば左の方に、丸囲みから道路に沿って線を引いて、娑婆の、日本にある国会議事堂に似た建物のイラストが描いてある処で万年筆のペン先を止めると、その絵を丸囲みにするのでありました。
「郡会議事堂ですか。ここが邪馬台郡の中心と云う事になるのですね?」
「ま、そうですね。石造りのなかなか厳めしい立派な建物でして、高い鉄格子の塀をめぐらしてあり、郡道一号線側に大きな正門があります。門衛が二霊立っておりますのですぐにそれと判りますよ。で、この建物の横が郡長官邸で、ここも塀に囲まれております。こちらの建物は、昔は議事堂と同じような威厳ある建造物でしたが、老朽化したので数年前に近代的なものに建て替えられました。全面硝子張りで綺麗なビルになりましたが、前に比べるとつるっとしていて、なんとも味わいのない感じになりましたかな、私の印象では」
 コンシェルジュは議事堂の左横に描いてある、空の雲を映したピカピカの建物のイラストも丸囲みするのでありました。「この二つの建物の近辺は、郡会議員会館とか議員宿舎とか、それに行政官庁なんかが集まっておりまして、官庁街と云う事になります」
「因みにこの辺の住居表示は、千代田区永田町とか霞が関なんと云うのでは?」
 拙生は閻魔庁の住所が隼町だったこともあって、そんな事を訊いてみるのでありました。
「おお、よくご存知で」
 コンシェルジュは目を上げて拙生を見て感心するのでありました。探してみると絵地図の中にも、永田町と霞が関なんと云う文字が、濃藍色で小さく書いてあるのでありました。もうすっかり娑婆の東京の感じであります。郡長さんの名前も渋沢栄一さんであるし、それに風土も風習も近いと閻魔大王官に教えられたのでありますが、この邪馬台郡には向こうの世で日本人だった連中が、多く生まれ変わっているのでありましょう。それで以って何とはなしにそんな日本風な地名が、追々自然についたのであろうと拙生は想像するのでありました。それだけでも、拙生には邪馬台郡はなかなか馴染み易い処のようであります。
「この辺が邪馬台郡の表の貌と云う事でしょうから、気が向いたら、その他所行きの貌なんぞをちらちら観察してみましょうかな」
 拙生はそう云いながら絵地図に見入るのでありました。
「そうですね。街区をブラブラ散歩しながら、行き交う官吏達の服装とか態度とか顔つきなんかをクールに観察して頂ければ、この邪馬台郡がどの程度の行政能力を持っているのかが、おぼろげに掴めるかも知れませんね。ま、あくまで印象として、ではありますがね」
 コンシェルジュはそう云って、また絵地図の上に万年筆のペン先を下ろすのでありました。「ここから更に西に暫く行くと、邪馬台郡随一の繁華街に出ます」
(続)
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