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もうじやのたわむれ 145 [もうじやのたわむれ 5 創作]

「判りました」
 拙生は未だパンフレットを見ながら頷くのでありました。
「それからこちらは、この閻魔庁近辺の見所なんかが描いてある観光案内の絵地図です」
 補佐官筆頭が今度は、これもB五判の大きさに折り畳まれたリーフレットを差し出すのでありましたが、タイトルに『閻魔庁周辺散策ガイドマップ』とあります。「気晴らしに散歩に出る時なんかに使ってください。尤も、貴方様は邪馬台郡の実状を見聞なさるために外に出られるのでしょうから、気晴らしと云うのではなく現地調査となりますかな」
「道に迷ったら、この地図を見ながらここへ帰ってきますよ。これは助かります」
 拙生はそう愛想を云うのでありました。
「それからええと、・・・」
 補佐官筆頭は道服の懐に手を入れて何かを探すのでありました。「おお、あったあった。肝心のこれをお渡ししておかなければならないのでした」
 補佐官筆頭が取りだしたのは一枚の紙切れでありました。
「なんですか、それは?」
「三日後にキーをフロントにお返しになる時に、一緒にこの紙を出してください。香露木閻魔大王官の最終審理を受けて頂く時の受付票となります。この紙をフロントに出したら、そのままもと来た処に戻って頂いて、先程と同じ三十五番審理室の前の長椅子に座って、お名前を呼ばれるのをお待ちください。そう長くはお待たせいたしませんから」
「私が地獄省の何処に住むのか、最終的な審理をして頂くのですね?」
「そうです。ま、審理と云っても、ご希望地をお聞きしてそれを確定するために、大王官が区分けの箱に、貴方様の目の前でお名前の書いてある書類をその区分け箱に入れるだけの、至って呑気な作業ですがね。ま、一応そう云う形式を踏む事になっておりますもので」
「了解いたしました」
「もしこの三日間をお過ごしになるに於いて、不便とか、待遇や部屋の不満をお感じになったり、何か問題が発生したならば、フロントに何なりとお申しつけください。それから現地調査に外出される時は、フロント横に控えているコンシェルジュに一応ご相談頂ければ、様々便宜をお図りする事も出来ると思いますので、こちらも遠慮なくご利用ください」
「すっかり娑婆のホテルのサービスみたいですね。至れり尽くせりで恐縮です」
 拙生は補佐官筆頭に礼をするのでありました。
「いえいえ、とんでもない」
 補佐官筆頭が両手と首を横に何度もふるのでありました。「それでは、快適で有意義な三日間をお過ごしになられる事をお祈りいたします。私はこれで失礼いたしますから」
 補佐官筆頭がソファーから立ち上がったので拙生も一緒に立って、お互いにお辞儀を交わすのでありました。その後補佐官筆頭は審理室の方に向かって、拙生に背を向けて歩き遠ざかるのでありました。拙生は暫くその後ろ姿を見送っていたのでありますが、補佐官筆頭はホールを去る直前にふり返って、拙生にまた律義にお辞儀をするのでありました。拙生がそれに答礼するのを見届けて、補佐官筆頭はゆるりと姿を消すのでありました。
(続)
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