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もうじやのたわむれ 138 [もうじやのたわむれ 5 創作]

 拙生は補佐官筆頭の危惧を一応理解するのでありました。
「準娑婆省の事は、今後色々対応を考えなければならんじゃろうなあ、地獄省としても」
 そう云った後、閻魔大王官が声の調子をガラッと変えるのでありました。「いやところで、どうしてこんな話しになったのじゃったかな?」
「私の巻物に私の駄句が書いてあったためですかな」
 補佐官筆頭がそう云いながら、一方の手に持った俳句の覚えが書いてある巻物で、もう一方の手の掌を悠長に数度小さく打つのでありました。
「そもそも私が突然、お二方が手にされているその巻物は一体何なのかと、それまでの話しとは全く関係のない事をお訊ねしたのが発端でした」
 拙生は恐縮の色あいを語調にこめるのでありました。
「ああ、そうじゃったな。そいでこんな物は飾りじゃとワシが云うて、ワシの巻物に、ウチの婆さんに電話で頼まれた買い物のメモが書いてあるのをお手前に披露して、それからこの補佐官の巻物には何が書いてあるのかと云う事に話しが移って、それでそこに書いてある俳句の話しになって。・・・しかしそのお手前の質問の前に、ワシ等は一体何の話しをしておったのじゃったかいな? どうも最近ワシはもの忘れがひどうていかんわい」
「邪馬台郡の話しでした。この亡者様の生まれ変わり希望地の事で、娑婆の日本に近い環境の処はないかとお尋ねがあって、それで邪馬台郡があると、そう云う話しの流れで」
 補佐官筆頭が応えるのでありました。
「おう、思い出した、思い出した。そうじゃ、そうじゃ。」
 閻魔大王官がそう云って、嬉しそうに文机を巻物で一つ打つのでありました。「で、お手前、生まれ変わりの地は邪馬台郡に決まりかいの?」
「そうですね、しかし出来ましたら、もう少し邪馬台郡のお話しを色々伺いたいのですが」
「どんな事をじゃい?」
「まあ、邪馬台郡の文化と云うのか、風俗であるとか、風習であるとか、住んでいる人の、いや、霊の気風であるとかとか、代表的な街の様子であるとか、その他諸々と」
「あのう、・・・」
 補佐官筆頭が話しに割って入るのでありました。「あのう、話の途中で失礼いたしますが、私はもう大王官殿の後ろの、何時もの立ち位置に戻ってよろしいでしょうか?」
「おう、云うのを忘れておった。迂闊じゃったわい。さっさと戻って構わんぞ」
 閻魔大王官が頷くのでありました。補佐官筆頭は閻魔大王官に慇懃な物腰で一礼して、横の拙生にも律義なお辞儀をして、序でに愛想の笑いもして、閻魔大王官の後ろの元居た立ち位置に、大時代的な衣装の裾を引き摺りながらゆっくりと戻るのでありました。
「一応私としましては、邪馬台郡がどのくらい娑婆の日本に近いのか、確認をしておきたいと思いましてね。閻魔大王官さんに、この上面倒をかけるようで恐縮なのですが」
「いやいや、そんな事は恐縮せんでも宜しいが、しかし、ワシが言葉でまわりくどく説明するよりも、どうじゃな、そのお手前の目で、邪馬台郡をちょっくら見てみては如何かな?」
 閻魔大王官がそう提案するのでありました。
(続)
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