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もうじやのたわむれ 134 [もうじやのたわむれ 5 創作]

「ま、暗喩風に云えばそうじゃ」
「暗喩風に云えば、ですか?」
 補佐官筆頭は閻魔大王官の云い草が、上手く理解出来ないと云う顔をして見せるのでありました。「しかし大酒さんはあくまでも夢に出てはいらっしゃいましたが、それは実際に私の宿の部屋にご本人が入っていらっしゃる、と云う事とは違うのではないでしょうか?」
「如何にも大酒自身の生身の体は、お主の宿の部屋には入ってはこんかったかも知れんが、しかし大酒の悪意と云うのか悪気と云うのか、兎に角そう云うものがお主の部屋に忍びこんで来たのじゃよ。で、寝ているお主の耳元で件の句を繰り返し囁いた。そうして件の句をお主のオツムに刷りこんだ。だからお主は大酒の出てくる宴会の夢を見たのじゃろうて。ほれ、テレビをつけっ放しにして転寝をしていると、時々テレビで云っている科白とかその場面とかが、その儘夢になったりする事があるじゃろう。つまりそれと同じ事じゃな」
「そんな事が出来るのですか?」
 これは拙生が訊くのでありました。
「娑婆に様々な手練手管でちょっかいを出して、怪奇現象なんぞを起こして面白がっている準娑婆省の連中にとっては、そんな事は朝飯前じゃろうて」
「だから、私は大酒さんに弄ばれたとおっしゃったのですね?」
 補佐官筆頭が瞠目した儘訊くのでありました。
「如何にもそうじゃ」
 閻魔大王官は確信ありげに一つ頷くのでありました。
「しかしそんな無粋で下らない悪戯をして、大酒さんは何か利益があるのでしょうか?」
「利益なんぞはないじゃろう。しかし面白がる事は出来るな。既に娑婆に存在する句を、お主がさも自分が考えついたように勘違いして、悦に入るのを面白がるわけじゃ」
「そうやって私をおちょくるような真似をして、何か面白いですかね?」
 補佐官筆頭が怒ったような語調で云うのでありました。
「そう云う霊の悪い真似をして面白がるのが、準娑婆省の連中のどう仕様もない性じゃ」
「霊の悪い真似、と云うのは、娑婆で云えば、人の悪い真似、ですね?」
 拙生が訊くのでありました。
「正解じゃ!」
 閻魔大王官は邪悪そうな笑いをつくってピースサインをするのでありました。
「大酒さんは娑婆の落語にそのような句があることを、既にご存じだったのですね?」
 補佐官筆頭がやや語調を和らげて訊くのでありました。
「そりゃ知っておるじゃろう。準娑婆省は今現在の娑婆を相手に様々な悪戯をしておるのじゃから、ワシ等よりは娑婆の事情には余程精しいじゃろうよ。大酒は俳句とか俳諧が趣味ならば、娑婆のそのような句なんぞも、ちゃんと勉強しておるに違いなかろうて」
「要するに私は、大酒さんにまんまと陥れられたのですね」
「お主の少し間抜けた面を見ていたら、なんかおちょくってやりたくなったのじゃろうて。如何にもおちょくり甲斐のあるヤツが丁度地獄省から遣って来た、というんでな」
(続)
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