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もうじやのたわむれ 131 [もうじやのたわむれ 5 創作]

「その、さるすべりの句に関しては、話しはそれでお仕舞いになったのかえ?」
 閻魔大王官が顎髭を扱きながら訊くのでありました。
「そうですね。もう一捻り考えて、今度こちらに出張して来た時に会心の句をお披露目いたしましょう、どうせまたウチの閻魔大王官の失態、・・・いやまあ、何です、その、・・・閻魔大王官のご用事で、すぐこちらに来る要件が出来るでしょうから、なんぞと私が申し上げて、それで次のお題を大酒さんから頂いたのです」
「ん? ワシにはお主を準娑婆省に出張させる用事なんぞは何もないぞい」
「そっちに用事がなくても、どうせまた例のミスを仕出かしてくれて、こっちが尻拭いにまたすぐ出張する羽目に陥るんですから。・・・」
 補佐官筆頭が閻魔大王官にはちゃんと聞き取られないように、口を遠慮がちにモゴモゴと動かして、籠った小声でげんなりした語調でそう云うのでありました。横で聴いていた拙生には、はっきりその補佐官筆頭の言葉が聞こえるのでありました。
「なんじゃな、よう聴き取れんかったが?」
 閻魔大王官が片耳を補佐官筆頭の方に差し出すのでありました。
「いえ、何でもありません」
 補佐官筆頭は愛想笑いながら、顔の前で巻物を横にふって見せるのでありました。
「まあ、ええわい」
 閻魔大王官はそう云ってあっさり、出した片耳を引こめるのでありました。「それで、次に出たお題は何じゃったのじゃ?」
「はい、ふくじゅそう、でした」
「それで、福寿荘、お二人さんで一万円、と云う句をお作りになったのですか?」
 これは拙生が補佐官筆頭に訊いた言葉でありました。
「いえその時は、福寿の相、薄情そうで不審そう、なんと云うのを捻りました」
「なんだか意味不明のややこしい、ちっとも味わい深くもなんともない句じゃな」
「私の友達に福寿と云う姓の男がおりましてね、そいつの面相がなんか酷薄そうで陰鬱そうで、云ってみれば典型的な不審者の面でありまして、まあ、根は良いヤツなんですが、急にそいつの顔が思い浮かんだものですから、韻を踏みつつそう云う句を捻ったのです」
 補佐官筆頭が頭を掻きながら説明するのでありました。
「ふうん。まあ、良いわ。で、大酒はその句にも小難しいいちゃもんをつけたのじゃな?」
「まあ、そうです。で、これもまた捻り直しておきますとなりました」
「その後に出たお題が、朝顔、ですか?」
 拙生が訊くのでありました。
「そうです。これはですね、鉄人の、寝覚めの一声朝ガオー、なんと云うのを吐きました」
「うーむ、下らないにも程があるというものじゃ」
 閻魔大王官が鼻を鳴らすのでありました。
「大酒さんにもそう云われました。それに随分間抜けな句ですねとも」
 補佐官筆頭が呑気な顔でその時の遣り取りを披露するのでありました。
(続)
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