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もうじやのたわむれ 110 [もうじやのたわむれ 4 創作]

「娑婆で云う、宇宙、というのも、こちらでは違う名称となる」
 お地蔵さんが重々しい物腰で云うのでありました。
「どう云う名前なのですか?」
「それは、基宙、と呼ばれておる」
「忌中?」
「いや違う。基宙、だ。この世に在る総ての母なるものであるから、母宙、とも云われる」
「喪中、ですか?」
「いや、母宙、だ。そのような冗談はよせと云っているではないか」
「忌中に喪中ね。確かに同じような意味だ」
「いや、基宙に母宙だ」
「では銀河は?」
 拙生はなんとなく面白くなってきたので質問を重ねるのでありました。
「捻河、となる」
「年賀?」
「いや違う。捻河、だ。何度も云うが、不謹慎な発言は控えろ」
「太陽は?」
「これは、炎炉、である」
「遠慮?」
「違う。炎炉、だ。炎の炉だよ。なんかそんな感じだろうが」
「惑星は?」
「柵星、だな」
「作成?」
 拙生は大袈裟に、手を翳した耳をお地蔵さんの方に近づけて聞き返すのでありました。
「いや。柵星、だと云っておろうが」
 拙生は少し黙ってから、なんとなくそれを続けて云うのでありました。
「母宙につき捻河の儀はご炎炉申し上げます。・・・」
 拙生は云った後にまた叱られると思って、反射的に首を竦めるのでありました。
「なんだそりゃ?」
「いや、なんでもありません」
「わけの判らない戯れ言を云うな。しかし因みに聞くが、最後の柵星はどうなった?」
「いや、そう云う喪中葉書きをパソコンで柵星した、と云うところでご勘弁を。・・・」
「この大馬鹿野郎!」
 拙生はお地蔵さんに怒鳴られるのでありました。
「どうも済みません」
「馬鹿々々しいにも程があると云うもの」
 お地蔵さんはそう吐き捨てるのでありました。前の審問官や記録官のように、お地蔵さんにはこう云った下らない地口遊びを面白がるような性情は、毛程もないようであります。
(続)
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