So-net無料ブログ作成

もうじやのたわむれ 100 [もうじやのたわむれ 4 創作]

「勿論その通りである」
 お地蔵さんはそう云って堂々と胸を張るのでありました。その如何にもあっけらかんとした胸の反らし具合に、拙生は何やら臍の周りがムズムズするような違和感を覚えるのではありましたが、しかしそのあっけらかんさを、お地蔵さんは端から妙であるとは思いだにしてはいないようでありました。これがまた、拙生の臍の周りをむず痒くさせるのでありました。拙生はお地蔵さんに見えないように、自分の腹に両掌を当てるのでありました。
「極楽省のトップに位する方は、どう云った方なのでしょうか?」
「嘗て遠い昔に、極楽省を実質支配していた阿弥陀庁の大蔵局、建設局、通産局の三つの局の、そのトップを総て経験した跳びっきりの偉い御方がいらして、その御方が国家主席たる、阿弥陀神様仏様王様、と云う終身の地位につかれて専制統治されておられたのだ」
「阿弥陀神様仏様王様?」
 拙生がそう繰り返すと、お地蔵さんは重々しく頷くのでありました。
「しかし名前があんまり長いから、丁度九文字の地位名であるので、阿弥陀九字様、と一般的には云い倣わされておったが」
「阿弥陀くじ?」
「その通り。しかしそんな呼び捨てでは無礼であり無神経であるから、ちゃんと最後に、様、と云う尊称をつけなくてはいかんぞ」
 お地蔵さんが厳めしい顔で拙生を睨むのでありました。
「これは大変失礼を致しました」
 拙生はたじろいだ態で、何度かお辞儀をするのでありました。
「この四万年来、その阿弥陀九字家の直系の子孫が代々、極楽省のトップと云う事になるな。現在は第百九十九代の阿弥陀九字様が君臨されておられる」
「極楽省のトップは世襲制なのですか?」
「その通り。その方が万事につけて単純に、円滑に収まる。勿論裏側で、膨大な数の優秀な官僚たちがその補佐をするわけだがね」
「しかし現代が第百九十九代目で四万年とは、これまた随分長く続く王朝ですね」
 拙生はそう云った後に、王朝、と云う言葉が適切であるのかどうか不安になるのでありました。また不用意な言葉を発したと、お地蔵さんに噛みつかれるのも叶わないですし。
「そう。盤石の支配基盤と巧妙極まりない支配機関を持った、万霊に尊崇心服されるところの見事な仕組みであるからな、この極楽省の統治体制は」
 どうやら、王朝、と云う言葉はそんなに不適切ではなかったようであります。
「中国の漢王朝にしたって、前漢十五代で後漢十四代、四百年と云うところですから、とても極楽省の足元にも及ばない程の長さですね」
「そりゃそうだ、娑婆の人間とこちらの霊とでは平均寿命が格段に違うからな」
「しかしそれにしても、百九十九代、四万年と云うのは途轍もない数字ですね」
「お褒めに与って、かたじけない」
 別に褒めた積りはないのでありますが、お地蔵さんはそう云って頷くのでありました。
(続)
nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0