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もうじやのたわむれ 78 [もうじやのたわむれ 3 創作]

「ふうん。娑婆の病院の診察の順番と同じ要領なわけですか?」
「そうです。それが一番、文句の出ないルールでしょうから」
「ま、そうでしょうけど」
 拙生は審問官のその説明ぶりに、拙生の聞きたかった事の回答として納得出来るような納得出来ないような、複雑な心持ちがするのでありましたが、まあ、一先ず良いでしょう。
「一般的な例、あくまでごくごく一般的な例として申し上げるとすれば、大概の場合その女性と云うのは或る家庭の主婦でありましょうから、その子供として誕生した亡者様は、そこの家庭で、両親とか親族に愛情を豊かに注がれながら赤ちゃん時代、そして幼児時代を過ごし、その後、これもあくまで一般的な事例として、十八歳とか二十二歳とかで学校を無事に卒業するまで、幸せに過ごす事となります。まあ要するに、娑婆によくいる子供と全く同じです。勿論、色々な理由からそう云う、所謂幸福な環境を手に出来ない子供もありましょうが、まあしかし要するに、云ってみればそう云うのも娑婆と同じなわけです」
 審問官はそこで言葉を切って、やや拙生の方に身を乗り出すのでありました。「ところで入念にお断りしておきますが、私が今云っているのは、一般的通例的よく見聞きする的なモデルなのでありまして、決してそれが当たり前なのだ等と申しているのではありません。その辺の私の真意を正確にご斟酌頂いて、故意の誤解や、或いは本筋ではないところでの無茶ないちゃもんなんかをつけないで頂きたいものだと、平に願い上げる次第です」
「まあ確かに、個々様々な事情があるでしょうからね」
「ご理解有難うございます」
「前に、何かそこで、いちゃもんをつけられた事がおありなのでしょうか?」
 拙生はそう聞いてみるのでありました。
「ええ、まあ。今流行りのモンスター亡者様とか、時々いらっしゃいますので」
 審問官はそう云って眉を顰めて見せるのでありました。
「モンスター亡者なんと云うのがいるのですか?」
「ええ。ゴネ徳とか、云わないでいたら損とか、相手のヘマとか隙を見つけたらとことんそこを攻めないと気が済まないとか、相手が恐懼する様を見るのが無性に快いとか、云い負かされる事を異常に恐れるとか、判っていながら無理な意地の張りあいを竟して仕舞うとか、そう云った娑婆の風潮の中で長く生活してこられた亡者様は、こちらにいらしてもその身についた傾向がなかなか抜けないようで、何かとすぐ赤い顔をして頭の角をお出しになりましてね。頭の角なんと云うものは私等の専売特許の筈なのですが、こちらはそれをなるべく出さないように躾けられているものですから、もう、たじたじと云った按配で」
「いやいや、娑婆の殺伐とした悪習を、ここにまで持ちこんだりする不心得者になり代わりまして、娑婆から来たばかりの私が、一応ここで慙愧の念を表明させて頂きます」
「そんな、何も貴方が謝る必要なんかありませんけど」
 審問官は拙生の低頭の仕草に、恐縮の意をおろおろと現わすのでありました。
「で、話しは戻りますが、そうやって生まれ変わった亡者と云うのは、もう向こうの世での出来ごとなんかを一切、忘却して仕舞っているのでしょうか?」
(続)
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