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もうじやのたわむれ 74 [もうじやのたわむれ 3 創作]

 拙生のその言葉の後半は、殆ど独り言のような感じでありました。
「そう云うところで一つ、この地名の件はグッとその儘飲みこんで頂きたいものだと」
 審問官が揉み手をするのでありました。
「判りました。この閻魔庁のある処は、その上に地方名も郡名もつかない、千代田区隼町と名前のついた、特別行政区域だと云う事で納得致します。」
「有難うございました」
 審問官と記録官が揃って拙生にお辞儀するのでありました。
「いやいや私の場違いな拘りから、余計なお手間をおかけいたしました」
 拙生はそう云って同じように頭を下げるのでありました。
「さて、ところでどうです、何処か気に入られた地方がありましたでしょうかね? まあ住む地方は後程、閻魔大王官のもっと詳しい話しを聞いて判断すれば良い事なんですが」
「うーん、そうですねえ、何処も魅力的な処のようですからねえ」
「地獄の方も、なかなか棄てたものじゃないでしょう?」
「ええ確かに。それに娑婆から来たばかりの身にとっては、地獄省はなんとなく娑婆臭があって、すんなり馴染めそうな気もしますしね」
「そうですとも」
 審問官は拙生が地獄省の霊民になりそうな目が出たと思ったようで、ニコニコと愛想笑いなんぞを送ってくるのでありました。
「極楽省の方に関しては、説明とか紹介を聞かせて頂けるのでしょうか?」
「いや、極楽省の紹介は私たちの管轄の外になりますので、ここではそれは出来ません」
「では地獄省と極楽省を比較検討する事は、出来ないのですね?」
「申しわけありません。私共が極楽省についてああだこうだと申し上げる事は、越権行為でもありましょうし、何かと後で問題にされる場合がありますから、どうぞご勘弁を」
「では極楽省の事を聞きたい場合はどうなるのでしょう? 地獄省の情報だけしか教えていただけないのなら、私としても比較検討が出来ないではありませんか」
「極楽省の情報に関しましては、この後、閻魔大王官の最終審理室に行かれたら、そこに極楽省から出向してきた極楽省の吏員が控えておりますから、閻魔大王官の審理前にそこでお聞きいただく手順になっております」
「極楽省から出向してきた吏員?」
「ええ。極楽省の菩薩庁地蔵局と云う役所の官吏です。その官吏が、極楽省について細かいところまでご案内すると思います」
「すると、その極楽省の地蔵局のお役人さんの詳しい極楽案内を聞いてから、私は最終的な落ち着き処を決めれば良いのですね?」
「そうです。それを閻魔大王官にお伝えになれば、貴方のご意向通り決裁されるはずです」
「極楽の案内と云うと、これまた違う意味で興味がありますね」
「ま、そう期待されない方が良いかも知れません。極楽省と云う処は、案外退屈な処ですからね。おっと、こんな事を私が云っては拙いか」
(続)
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