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もうじやのたわむれ 72 [もうじやのたわむれ 3 創作]

「娑婆の世界地図となんとなくダブりますよね、こちらの八大地方地図も」
「そうかも知れませんね。娑婆であろうとこちらの世であろうと、『我々は宇宙人だ』の法則が支配しているわけですから、似たり寄ったりな状態になるのでしょうね」
「で、そうなるとこの閻魔庁の所在地と云う事になるのですが、・・・」
 拙生は中国、それも漢や唐の都のあった長安、今の西安を思い浮かべているのでありました。「ここはひょっとしたら、中華、とかなんとか云われているのではありませんか?」
「いいや違います。千代田区隼町です」
「千代田区隼町?」
 拙生は少々混乱するのでありました。
「娑婆の日本国の最高裁判所の所在地と、奇しくも同じ地名です」
「なんか、私をおちょくっておられませんか?」
 拙生はやや憮然たる顔をして見せるのでありました。
「とんでもない。そんな事をするわけがないじゃありませんか」
 審問官が両の掌を忙しなく横ぶりさせるのでありました。拙生はゆっくりと審問官の方へ掌を差しだして、その横ぶりを制するのでありました。前に同じような仕草を、立場を変えてお互いに交わしたのではなかったかしらと、ぼんやり考えるのでありました。
「私は今、審問官さんや記録官さんのお話しを伺いながら、娑婆の世界地図を頭に描いていたのですよ。別に東京二十三区詳細案内図を開いていたのではありません。急に千代田区隼町と云われても、そう云う細かな地名は頭の中の世界地図では探せませんよ。なにせオツムの出来が悪いから、開いているのは大判の細密世界地図ではなくて、A4判程度の大雑把な世界地図なんですからね。それに、例え四六倍判とかの大判の世界地図であったとしても、それでも千代田区隼町のような細かい地名は多分載っていませんよ」
「いやしかし、実際に閻魔庁の所在地名称は千代田区隼町なんですから、仕方ありません」
「千代田区隼町の前に、東滑地方とか云うような地方名はつかないのですか?」
「つきません」
「ならばせめて郡名、娑婆で云えば日本とか中国とかロシアとかの国名みたいなものは?」
「単に、千代田区隼町だけです」
「困ったな。・・・」
 拙生は腕組みをして天井を見るのでありました。
「では、その頭の中に開かれている世界地図を、一旦脇に除けてください」
 審問官はそう云ってから、テーブルの上の、拙生の娑婆でのあれこれが記してあるのであろう、クリップで止められた紙の束からまた一枚を抜き取って、それを裏返すと、そこにボールペンで簡略な図を描き始めるのでありました。
「さあ、これをお渡ししておきます」
 そう云って審問官から差し出された紙には、右端に縦に二条線が引かれていて、その線に沿って、三途の川、と縦書きされ、その真ん中すぐ脇に、千代田区隼町、と云う横書きの文字が、歪な円で囲ってあるのでありました。
(続)
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