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もうじやのたわむれ 56 [もうじやのたわむれ 2 創作]

 審問官と記録官が一緒にハッハッハと笑うのでありました。
「実際、審問室とか審問官とか記録官とか、まあ、閻魔大王官と云うのもそうですが、それに、審理、と云う言葉もそうですが、そう云ったしかつめらしい名前は、今の仕事の実状にそぐわないから、ぼちぼち改称いた方が良いかも、と云う意見も庁内にあります」
 これは記録官が云う言葉でありました。「しかし、案内係とか賑やかし係りでは、なんか如何にも威厳がないと云う反対意見も多くありましてね。この問題はここのところずっと、閻魔庁で色々賑やかに議論されておりますよ」
「ふうん。じゃあ、地獄の案内人、なんと云うのはどうでしょうかね?」
 拙生は冗談口調でそう提案してみるのでありました。
「お、やや格好良いですね」
 記録官が乗ってくるのでありました。
「閻魔庁の職員食堂のオジサンなんかは、地獄の料理人、となります」
「プロレスのキラー・コワルスキーみたいですね。いや彼は、地獄の大統領、でしたっけ?」
「料理人はハンス・シュミットです。しかし、キラー・コワルスキーをご存知で?」
 拙生は意外に思って記録官にそう聞くのでありました。
「ええ、知っております。寄席の六道辻亭の斜向かいに、リキ・スポーツパレス冥土アリーナと云う、運動ジムが併設された体育館みたいなもがありましてね、この前そこのプロレス試合で、若手の成長株同士、ジャイアント馬場さんと、その、地獄の大統領キラー・コワルスキーの試合がセミ・ファイナルで行われまして、結構な評判でしたよ」
「ふうん。往年の名勝負と云ったところでしょうか」
「娑婆では、往年の、でしょうが、こちらでは新鮮な名勝負です」
「ところで、それはセミ・ファイナルと云う事ですが、メイン・イベントは誰と誰の試合だったのか、序でにお聞きしたいのですが?」
 拙生はなんとなく興味津々の顔をして訊ねるのでありました。
「力道山対ルー・テーズのNWA世界選手権でした。テレビでも生中継がありましたよ」
「おお、それは凄い!」
 拙生は驚くのでありました。
「両者リング・アウトで、引き分けでした」
「私も是非観たかったですね、その魅力的な試合を」
「なあに、因縁の対決として、これから先もその試合が何度も組まれますよ」
 記録官がいかにも楽しみだと云った表情をするのでありました。
「ちなみに、リキ・スポーツパレス冥土アリーナの横には、三菱電機の掃除機組み立て工場が建っております。それからリキ・スポーツパレス冥土アリーナが老朽化したら、今度はそこに七曲り署と云う警察署が建つ事に、もう話は決まっているみたいです」
 これは審問官が紹介するのでありました。
「掃除機も警察署も、なんか一々、娑婆のあれこれと符合しているような気がしますね」
「ああそうですか」
(続)
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