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もうじやのたわむれ 40 [もうじやのたわむれ 2 創作]

「定年後も、幾ら魅力的なサラリーや地位が待っているとしても、勉強やらなにやらで百五十年もの間、頭を更に酷使していれば、それは確かに頑固になったり、物忘れがひどくなったり、指先に力が入らなくなったりするかも知れませんね」
「だから、起こってはならない書類の放置、とか云った不手際が起こるのです」
「しかし書類の放置程度のミスなら、後でどのようにも処置出来るように思いますが?」
「いやいや、それがそうもいかないのです」
 審問官が首を横にふるのでありました。
「と云うのも、閻魔大王官の決裁印が押してある審理結果書類は、閻魔大王官以外の霊が触ることが出来ないと云う規則があるのです」
 これは記録官が云うのでありました。
「規則、ですか?」
 拙生は怪訝な顔をして見せるのでありました。
「そうです。閻魔庁の鉄の規則です」
「鉄の規則、ねえ」
 拙生は胡散臭そうな顔を審問官に向けるのでありました。
「本来は厳正な審理結果を閻魔大王官以外の霊が、不正に操作できないようにするための規則であったのです。それはそれで全く妥当な、閻魔庁の規則だったのです」
 審問官がおごそかに一つ頷くのでありました。
「そう云う規則が出来たと云う事は、不正な操作が行われた事実があると云う事ですか?」
「はい、その通りです。過去に。戦後のどさくさの頃の話しですがね。ですから、その鉄の規則が出来たのです」
「それはまあ、納得出来ますが、しかしだからと云ってミスはミスだしなあ。しかもある意味で、呆れるくらいあっさりとした単純ミスだし」
「そこが官庁の融通の利かないところでして」
「それはそうなのかも知れませんけど、余りに融通が利かなさ過ぎではありませんか?」
「そう云われると恐懼致すのみですが。・・・」
 審問官が恐縮の物腰で頭を下げるのでありました。
「審理の場には、閻魔大王官以外の方はいらっしゃらないのですか?」
「いや、閻魔大王補佐官が五霊ついております」
「だったら、閻魔大王官以外が触れられないとしても、その補佐の方がその場で大王官に注意すれば良いだけの話しじゃないですか?」
「それはそうなのですが、まあ、なんと云うのか。・・・」
 審問官が少しの間、次の言葉を口から放つのを逡巡するような風情を見せるのでありました。それから記録官と顔を見ああわせて、二人で何やら目語するような仕草をしてから、二人同時に頷きあって拙生を見るのでありました。
「ぶっちゃけた話し、香露木さんと云う名前の閻魔大王官がそう云うミスを犯すのですよ」
 記録官が云うのでありました。
(続)
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