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もうじやのたわむれ 34 [もうじやのたわむれ 2 創作]

「いやいや、恐らくそうではありません。赤鬼局に就職した最初のご先祖様が、ウチの家系の初代の鬼と云う事になるでしょうが、まあ、余りにも昔で、純正の鬼となった変異の実相を突きとめる事は今や不可能なのですが」
 審問官はボールペンをくるんと回すのでありました。
「赤鬼局はそんなに古くからあったのですか?」
「ええ。地獄省が省家として建省した時には既にあったと云う事です」
「省家、は国家でしたよね。建省、は建国ですね? 念を押すようですが」
「はいその通りです」
 審問官がまた無表情の儘ボールペンをくるんと回すのでありました。
「赤鬼局に就職されたら、突然頭に角が生えるのですか?」
「まさか、そんな非現実的な事なんかあるわけがないじゃありませんか」
「非現実的なこと、ですか。・・・まあ、では、どうして?」
「私も詳しい事はよく判りませんが、なんでも獄卒として働いて百世代経過した辺りから、自然に頭に角が生えてきたんだと、昔ウチの爺様に聞いたことがあります。ほら、テニスプレイヤーの利き腕がやたらに太かったり肘が伸びなくなって仕舞ったり、合気道家の手首が嫌になる程太くなったりするでしょう、あれと同じような、・・・同じでないような」
 審問官は一旦言葉を切って頭を掻くのでありました。「まあ、要するに恐らく、環境適応と云うのか、職業適応したものでしょう。また何十世代か経過したら、もう生まれた時から我々の身体的特徴として頭に角が内蔵されているようになったようです」
「審問官さんも、角を生やして生まれてきたのですか?」
「いや、生まれる時に角があると、出産しにくいでしょう」
「それはそうですね」
 今度は拙生が頭を掻くのでありました。
「生まれる時は、角は内蔵されているのですから、我々の頭はツルンとしております。しかし頭髪も或る程度生え、寝返りを打つくらいになると、乳角が生えてくるのです」
「乳角?」
「ええ。それが学校に入って、まあ少年と呼ばれる頃になると永久角に生え換わるのです」
「乳角に永久角? 歯みたいですね」
「そんなようなものです」
 審問官がボールペンをくるんと回すのでありました。
「生え換わるのですね、子供の角が大人の角に?」
「そうです。良い角が生えるようにと、抜けた乳角を屋根の上に投げ上げたりします」
「いよいよ歯だ、それは」
 拙生は二度頷くのでありました。
「角は、子供の頃は大体外に出しているのですが、成長するに従って普段は中に仕舞っておくように躾けられます。でも平常心を失うと、勝手に外に出てきたりしますよ、子供の内は。それをなるべく出さないようにするのが大人の鬼なのです」
(続)
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