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もうじやのたわむれ 29 [もうじやのたわむれ 1 創作]

 拙生は頭を掻きながら云うのでありました。「思いつきのつまらない言葉なんかを無意味に差し挟んだりして、不要な戸惑いを与えて仕舞ったようで、どうぞご勘弁を」
「ふうん、成程ね。まあ、その、本職、と云う言葉は置くとして、貴方の心がけはまことに殊勝であると、大いに感服いたしました」
 審問官が拙生にお辞儀をして見せるのでありました。「しかし、焦らずに、お気楽に」
「第一、貴方が極楽に行くのか地獄に住むのか、未だ決まっていませんし」
 記録官が云い添えるのでありました。
「それもそうですね。ええと、ところで、また余計な質問をしても良いですか?」
「ええどうぞ、何なりとも」
 審問官が愛想の良い笑顔で拙生を見るのでありました。
「例えば我々亡者が、閻魔様のお裁き、いやお裁きではないと先に仰いましたが、ともかくそれで極楽行きか地獄行きかが決まって、まあ、そこの国民、いや、国霊、いや省霊になったとします。そうすると、省は国家みたいなものなのですから、例えば、・・・あくまで例えばですよ、また省界大戦みたいなものが起こったとしたら、我々はその戦争に動員されて、兵士として戦わなければならないわけですか?」
「ま、そうなります」
 審問官が重々しく頷くのでありました。「省霊には、省霊としての義務もあります」
「須らく省霊は愛省心から、省の危機を座して見ているわけにはいかんでしょう」
 これは記録官が横から云う言葉でありました。
「愛省心、は、愛国心、ですね、娑婆で云えば?」
「正解!」
 記録官が重々しい声で云って、重々しくピースサインを出すのでありました。
「愛省心は判るとして、そうなると戦いで死ぬと云うこともあり得るわけですね?」
「それは、戦争ですから、戦死も当然ながらあり得ます」
 審問官が少し声の調子を低くするのでありました。
「名誉の戦死、です。地獄省では勇気ある最も荘厳な死だとされています。しかし亡者の方々は一回死んでいますから、もう、死を恐れる必要はないのです」
 記録官がつけ足すのでありました。
「ああ、成程。それは確かに。いや、それはそれとして、私の伺いたい事はその死の意味とか意義とか云うところではなくて、今記録官さんが云われたように、我々は一度死んでいると云うのに、その死後の世界でも、またもや死ななくてはならないのですか?」
「そうですね。生者必滅ですから。あ、いや、生霊必滅か」
「死後の世界での再度の死、と云うのが、なんとなく上手く納得出来ないのですが?」
「先程青木君が云った『我々は宇宙人だ』の理論を思い出してください」
「娑婆とこちらの世は密接に連関して、同じ法則性で動いていると云うことですね?」
「そうです。娑婆で起こる事はこちらでも起こるのです。ですから、こちらでも当然の事として、死、と云う現象も起こるのです」
(続)
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