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もうじやのたわむれ 24 [もうじやのたわむれ 1 創作]

 審問官が落ち着いた口調で云うのでありました。それは記録官のやや昂じた物腰をやんわり窘める意向も、暗にあるように思われるのでありました。
「それは確かに、そうかも知れませんね。閻魔様の目が怖いので、娑婆で悪さが出来なくはなりますかな、我々人間は。いやもう、私は人間ではないですが」
 拙生は頷くのでありました。
「そうでしょう?」
 審問官は拙生の納得顔に、満足そうな笑みを返すのでありました。「しかし極楽省としては矢張り、霊口増加と云う点で、そう云う不信感を地獄省に対して抱いているわけです」
「先の第一次省界大戦も第二次省界大戦も、それが原因だったのですか?」
「まあ、底流にはそれが大いにあります。直接の争いの端緒は、色々他の事由なのですが」
「しかしそうやってこの天界でも、各国が、いや各省がお互いに不信感とか敵意を抱いているなんと云う事とか、省間で争い事までしたと云う事を聞くと、なんとなく救われないような気がしてきますね、最近まで娑婆にいた我々としては」
「いやもう、そう云われると慙愧に堪えません」
 審問官が頭を下げるのでありました。
「いやいや、争い事ばかりに明け暮れていた娑婆に、つい最近までいた私が云うのはおこがましくて、こちらの方こそ恥入る次第ですが。しかし娑婆もこちらも、実相はそう変わらないのですねえ。いやあ、大いに勉強になります」
「密接な連関性と同法則性の左証ですよ、娑婆とこちらの」
 記録官が云うのでありました。
「つまり『我々は宇宙人だ』の証明、ですな」
「そう云うことです」
 記録官が何やら重々しく頷くのでありました。
「あのう、こう云った質問は或る意味で機微に属することかも知れませんし、ご不快かも知れませんが、客観的なところで、極楽省とこちらの地獄省の、その国力、いや省力の比較と云うのは、如何なものなのでしょう?」
 拙生は先の省界大戦で地獄省が負けたと云うのを聞いていたものだから、その辺りに多少のデリカシーを漂わせて言葉を発するのでありました。
「そうですねえ、省力と云う点ではちいとばかり極楽省の方に分があるかな。向こうは気候温暖で農産物の実りも豊かだし、肥沃な省土を持っていますから。工業生産も工業技術も、多くのノーベル賞クラスの亡者の方々を優遇したりして、そのアドバイスの下、その辺はかなり意欲的でそつのない政治を行っておりますし。それに娑婆に於いて故人の供養とかお墓参りをする時の、お供物の殆どは極楽省の省庫に納められますからね」
 審問官が云うのでありました。
「省庫と云うのは、娑婆で云えば、国庫、の事ですね?」
「正解!」
 これは先程の審問官と同じに、記録官がピースサインをしながら云った言葉であります。
(続)
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