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もうじやのたわむれ 19 [もうじやのたわむれ 1 創作]

「ええまあ。戦後の長い歴史の中で一度だけ。省同士の軍事組織に依る、紛争と云った大袈裟な事ではないのですがね。向こうは政治が良くないものですから、不逞の輩と云うのか、向こう見ずのアウトローみたいな連中も結構おりましてね」
「しかし、ものの数分で我が防衛隊が圧倒的な実力差で鎮圧してしまいました。ですから亡者様にはなんの被害も出てはおりませんので、どうぞご懸念のないように」
 記録官が審問官の言葉に続けて、どちらかと云うと、拙生の懸念の方よりは地獄省の防衛隊の優秀さの方を強調するように、やや自慢気な面持ちで云うのでありました。
「しかし他国、いや他省の領土内で地獄省の軍事組織が実力行動に出たと云うのは、外交問題になりそうですよね?」
「ま、少々そう云った側面も、事件の処理の上でありましたかな。しかし全くやむを得ない事情と云う事で、なんとか円満に解決いたしました」
「でも、国同士、いや省同士の政治的な折りあいの点では一定の妥協を得たとしても、そう云うのでは準娑婆省内の一部政治家は勿論の事、省内の民意、いや霊意が納得しないのではないですか? 民族主義、いや霊族主義が台頭したり、地獄省排斥運動が起こったり、不買運動が起こったり、場合に依っては要人テロが起きたり」
 拙生は内心、不謹慎ながらなんとなく面白い話しになってきたと思って、無意識に身を乗り出しているのでありました。
「まあしかし、先程も青木君が云ったように、あいつ等なんぞは、・・・」
 審問官がそこで言葉を一端切って、おっと、うっかり迂闊な言葉を使って仕舞ったと云う様な顔をしてから続けるのでありました。「いやまあ、あいつ等なんて、そんな云い方はいけませんね。ええとつまり、準娑婆省の省霊の霊度はあまり成熟してはいないので、省霊的な、判りやすく向こうの世界的に云えば国民的な盛り上がりは、結局殆どなにも起きませんでした。ま、要するに、その程度の省と云う事です」
 審問官の口調には、隠そうとしながらも現れてしまう、準娑婆省を端から侮って止まない気分が仄見えているようにも思われるのでありました。
「ふうん、そうですか」
 拙生は顎を撫でながら頷くのでありました。
「ええと、ところで当初、なにをご質問されたのでしたっけ?」
 審問官が拙生に問うのでありました。そう云われて、実は拙生は、一瞬、さて自分は先程なにを質問したのかしらと考えて仕舞うのでありました。こう云う迂闊なところが、向こうの世に居た頃から拙生にはあったのでありますが、これはこちらに来ても一向に直っていないようなのでありました。
「ええと、・・・ああそうだ、鬼の話しだ。祟りをなす鬼の話し」
「ああそうでしたね」
 審問官が二三度頷くのでありました。「娑婆に怨念を残した儘の亡者が鬼と化して、あちらの世界に留まり続けて、祟りをなすと云うのはどう云う具合なのかと云う質問でしたね」
「ええ、そうでしたそうでした」
(続)
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