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もうじやのたわむれ 16 [もうじやのたわむれ 1 創作]

 拙生は恐縮の態を示しつつ問うのでありました。
「ええどうぞ。疑問点はどんな小さなことでもお聞きください」
 審問官が愛想の良い笑いを浮かべて、掌を上に向けて拙生の方に出すのでありました。
「現世で、つまりあちらの世界で、非業に倒れた者とか、恨みを残した儘世を去った者とかの、その怨念とか無念とかが、その亡者を鬼にすると云うことを聞いた事があったように思うのです。その鬼と化した亡者は、あちらの世に留まり続けて祟りをなすとも云われておりましたか。その辺は、如何なものなのでしょう?」
「ああ、川向うの準娑婆省内の鬼の中には、そんな娑婆っ気の抜けない鬼もいますかな」
 審問官がボールペンを指の間でくるんと回すのでありました。
「川向うの鬼と云うと、・・・」
「いや、先程お話しした気象統括庁の雷雨担当官の鬼ではなくて、違う種類の鬼ですが」
「三途の川の向う岸には、色んな鬼の方がいらっしゃるのですか?」
「川向うは地獄省が統治していないのですから、私がとやこう云うのは障りがありますが、川向うの準娑婆省には色んな種族の鬼が雑居しています。性質の良くない鬼なんかも」
「ええと、またちょっとさっきの質問とは離れて仕舞いますが、その今のお言葉の中で、一つ確認をさせて貰って宜しいでしょうかね」
「ええ、どうぞ」
 審問官がにこやかな顔で拙生の方へボールペンを握った手を差し出すのでありました。
「向こう岸の港湾施設は、地獄省の管轄なのですよね?」
「港湾施設は地獄省の直轄です。港湾維持局も渡河船運航事業局も港湾サービス局も」
「川向うではあっても、港湾施設のみは地獄省の直轄なのですね?」
「そうです。三途の川の向こう岸の準娑婆省と云う処は、娑婆で起こる怪奇な諸現象を統括している省です。あくまで娑婆内の出来事の統括を専らとしています。ですから準娑婆省の権限等は、川を隔てたこちら側には一切及ばないのです。こちらもあちらのやることには不干渉というスタンスです。ま、お互い独立した国同士と云った感じですかな、向こうの世界に準じて云うなら」
「ふうん、そう云う風な成り立ちなのですか」
 審問官は笑顔で頷いてから、徐に拙生の前世の情報が記してあると云う目の前の紙の一枚をクリップから取り外して、その紙だけ裏返しにして、そこにボールペンでなにやら書き始めるのでありました。拙生は審問官が書き終えるのをなんとなく待つのでありました。
「書き方がまわりくどく見えるかも知れませんが、これを見て頂いたら、こちらの様子も大まかに判るでしょうかな」
 審問官は書き終えた紙を回して、拙生の方に静かに押し遣るのでありました。そこには省名や地獄省の幾つかの庁局の名前が、律義そうな字で書き記してあるのでありました。
<準娑婆省、極楽省、地獄省-各地獄管理庁(各地獄の管理運営局等)・庶務庁(入省管理局等)・閻魔庁(閻魔大王審理所-審理補佐局)・その他・省に付帯する第三セクター(各港湾管理事業所{港湾維持局・渡河船運航事業局・港湾サービス局}・その他)>
(続)
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