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もうじやのたわむれ 15 [もうじやのたわむれ 1 創作]

 記録官が続けるのでありました。「昔テレビか映画で『我々は宇宙人だ』なんと云う決め科白で、そこいらの地球人をやたらに脅かす宇宙人が出て来るのがあったでしょう」
「ありましたね。映画の『地球防衛軍』だったかな。その科白、知っているんですか?」
 拙生は記録官が急に突拍子もない話題を持ち出した事に些かの戸惑いを覚えつつ、そう問いかけるのでありました。
「ええ、こちらでも有名ですから。それでね、その宇宙人にその常套手段で脅かされる地球人のうろたえぶりとか、恐怖に引き攣る顔を思い浮かべながら『そんなこと云われても、云ってみれば我々も宇宙人だし』と、どうしてちゃんと地球人が云い返さないのかと、この点、大いにもどかしく思っていたのですよ。そう云う風に云い返せば、屹度宇宙人も、なんとなくもじもじとしながら納得して引き下がるだろうにと」
「ああ、成程ね」
「そもそも宇宙の成員たる地球が、宇宙の法則を免れて存在していることなんかないのだし、そう云う意味では地球人もより大きな属性で云えば宇宙人なのですよ。だから宇宙人が『我々は宇宙人だ』と云って、さも勝ち誇ったような顔で同じ宇宙人を脅かす、その彼の鈍感さとか、見識の低さとか、それに地球と宇宙をまるで違うものとして認識している幼稚さとか、より大きな属性である宇宙人と云う範囲の中に閉じ籠もって、その下の属性たる地球人と対となる、己の属性を明示しないその不誠実さなんかを、ちゃんと指摘してやればいいのですよ」
「お説ご尤もではあります。そのツッコミは昔からありましたかな。でもまあ、お決まり通り地球人が驚かないと、宇宙人も立つ瀬がないし、話しも進行しないでしょうけど。・・・」
 拙生はなんとなく、記録官に詰られる宇宙人のような心持ちがしてくるのでありました。
「それはそれとして、だからつまり」
 記録官が急に語調を変えるのでありました。「互いに密接に連関し、同じ法則性を持っているのですから、娑婆で起こることはこちらでも起こって当たり前だし、娑婆もこちらも行動や考えのパターンは、風俗や流行に至るまで、結局似たり寄ったりだと云う事ですわ」
「いやご尤も。宇宙的な比喩まで頂戴して、大いに納得致しました」
 拙生は記録官に丁重に頭を下げるのでありました。釣られて記録官の方も拙生にお辞儀をするのでありました。
「ま、要するに、以上が娑婆で云われている赤鬼青鬼の正体ですな。なんか色々な話しを加えたものだから、貴方の当初のご質問たるそこいら辺のご理解が、曖昧な感じになりはしなかったかと、やや恐れるのではありますが」
 これは審問官が云う言葉でありました。
「いやいや、それは私が質問を重ねたせいですし、赤鬼青鬼の件もほぼ、了解出来ました」
 拙生は、今度は審問官の方を向いて頭を下げるのでありました。こちらも釣られて、拙生にお辞儀を返すのでありました。
「まあ、それは結構であります」
「もうちょっと鬼の件でお訊ねしても宜しいでしょうか?」
(続)
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